●「男」として肯定される場所、自己開示できる場所の欠如
水や風の世界は、男性の欲望をダイレクトに具現化・肯定した世界、それゆえに女性差別の塊以外の何物でもない世界として捉えられがちですが、見方を変えれば、男性の生きづらさ、そして社会的孤独が凝縮して表れている世界だと言えます。
ライフコースの観点から見ると、大多数の男性には、「学校を卒業したら、後は定年まで40年間(あるいは死ぬまで)ひたすら働き続ける」以外の道がありません。その道から外れた男性は「ニート」「ひきこもり」「無業者」というカテゴリーに入れられてしまい、社会的な居場所や出番を失ってしまう。
私が18 歳だった1990年代後半は、「安定からやりがいへ」という労働観が世の中に広まり始めた時代でした。大企業でサラリーマンとして働くよりも、NPOやITベンチャーで個人のスキルを活かして働くこと(あるいは起業すること)、やりがいを重視した仕事をすることこそが「新しい働き方」としてもてはやされていました。
私自身も「このまま地元の新潟で公務員とか正社員とかになるくらいなら、首を吊ったほうがマシだ」と真剣に思っていました。
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