漫画家・清野とおるを生んだ伝説の番組「何だ?こりゃ」とは?【前編】

ゴハンスキー⑤』『その「おこだわり」、俺にもくれよ!!⑤』『Love&Peace~清野流・居酒屋&スナック攻略術~②』を同時発売した漫画家、清野とおる。そんな彼が多大な影響を受けたテレビ番組がある。『突然変異報道番組 何だ?こりゃ』だ。わずか5か月のみ放送された番組の何がスゴかったのか!? 今回、番組の仕掛け人で現フジテレビジョン取締役西渕憲司氏を清野が直撃、怒涛の1万字対談がここに実現!

漫画家・清野とおるを生んだ「伝説の番組」

西渕憲司(以下、西渕) どうも初めまして。ここもいい店っすね~。さすが赤羽だなー。

清野とおる(以下、清野) は、はずみますて。

西渕 え?

清野 た、対談企画にも関わらず、いきなりどもってしまって、すみません。今日は憧れの方との対談ということで、人生の総決算のような気分で臨んでいるので、感無量すぎて舌が回らないんです。

西渕 あっはっは。「総決算」って! 決算には早すぎますよ。お会いするのは初めてですが、清野さんは漫画に劣らず「業」の深そうな方ですね。

清野 西渕さんこそ、初対面で、しかもフジテレビの取締役なんていう偉い方に、こんなこと言うのもなんですが「業」がお好きそうな方ですね。

西渕 ええ。「業」、大好物です。

清野 あくまで正式タイトルで呼ばせていただきますが、『突然変異報道番組 何だ?こりゃ』は、僕の原点だと思っているんです。漫画家・清野とおるの生みの親と言いますか。今まで僕が漫画でやってきたことって、ほぼ『何だ?こりゃ』だと言っても過言ではありません。西渕さんは僕にとっての母。ですので、今日は「お母さん」と呼ばせてもらっていいですか?

西渕 あっはっは。「母」って。大変恐れ多いですし、『ゴハンスキー』にもご出演されていた本当のお母さまに申し訳ないですが、お呼びになられるならどうぞ。

清野 では、よきタイミングがありましたら「母」扱いさせていただきます。

西渕 まあ、私が清野さんの「母」たり得るかどうかはわかりませんが、『何だ?こりゃ』という番組は、相当好き放題にやらせてもらった非常に思い入れのある番組だったんで、そんなに熱心に観ていただいていたのは大変うれしいですよ。

清野 はじめて観たのは中学2年生でした。たまたま新聞の番組欄を見ていたら、「突然変異報道番組」という文字が目に入ってきたんです。『突然変異報道番組 何だ?こりゃ』? まさに「何だ?こりゃ」と思って観てみたら、何かおもしろいことを求めているんだけど、それがどんなものなのか分からないでいた当時の僕が思い描く「おもしろいこと」を形にしてくれたような理想的な番組だったんです。完全にハマってしまい、それからは毎週欠かさず観るようになりました。

憧れの人を前に終始緊張気味の清野

西渕 それはうれしいっすね~。中学生がそんな瑞々しい感性で番組を観てくれていたなんて、案内人(※)冥利につきますよ。どんなネタがお好きだったか覚えてらっしゃいますか?※番組エンドロールには西渕氏はプロデューサーとしてではなく、「案内人/西渕憲司」として登場していた。

清野 「ビクターの犬」とか好きで、ときめいてましたね。

西渕 ああ、懐かしい! あれは視聴者の投書が来たんですよ。高速道路を走っていると、いつも同じ場所から道路を見ている犬がいるという内容で、なんかちょっとおもしろいなと思って見に行ったんです。で、高速から見てみると本当にマンションからこちらを見ている犬がいた。で、マンションの部屋番号を突きとめて取材に行ったんです。

 そしたら、犬は犬でもビクターのCMに出てくる置物の犬だった。でも、その背景には一つの物語があって、その家のお子さんが飼っていた愛犬がいたんですけど、マンションに引っ越すということで泣く泣くお別れしたそうなんです。で、親が犬の代わりにビクターの犬をプレゼントしてくれて、そのお子さんは「ビクターの犬」を愛犬同様にかわいがっていたという、意外に素敵な話だったんですよね。

清野 そうそう。『何だ?こりゃ』は観ていると突然新たな事実が明らかになったりするのが、おもしろかったんですよね。当時は「宝島」の「VOW」なんかも流行っていて、僕自身も街にあるヘンなものを探すのが好きだったんです。ただ、「VOW」は街にあるヘンなものを見つけて写真に撮って紹介するだけで完結していて、おもしろいんだけど、そのおもしろさをそのまま静観しているような感じでした。想像する楽しみもありましたが、僕はどうしても「答え」を知りたいタチでして。

『何だ?こりゃ』は、その先を行ってるんですよね。街で見つけたモノに突っ込んでいって取材することによって、意外な事実が判明したり、予想以上の結果が立ち現れたりして、対象にどっぷり浸りきったところで生まれる新たな「おもしろさ」が匂い立ってくる感じがしたんです。それって、まさに僕が今『赤羽』でやってることなんですよね。原点はすべて『何だ?こりゃ』。だから、西渕さんは僕にとっては「母」なんです。

西渕 いやいや、そんな。恐縮至極ですよ。

『何だ?こりゃ』にハマりすぎてサッカー部をクビに

フジテレビジョン取締役の西渕憲司氏

西渕 でも、『何だ?こりゃ』の放送期間は半年もなかったんですよね。しかも、金曜の夕方5時半という時間帯だったんですが、中学生がよく毎週観てましたね。

清野 当時は中学2年生でサッカー部に在籍していたんですが、『何だ?こりゃ』を観たいがために部活をサボっていたんです。

西渕 サボって観てたんですか? あっはっは! それはうれしいっすね~。でも、中学生が部活をサボったら結構大事になるんじゃないですか?

清野 「毎週金曜だけ清野が来ない!」ということが、先輩や先生の間で問題になったんですけど、どうしても『何だ?こりゃ』は観たかったんで、金曜だけはサボり続けて、結果クビになりましたが、悔いはありません。

西渕 あっはっは! ホントっすか! サッカー部と『何だ?こりゃ』を天秤にかけて『何だ?こりゃ』を取るなんて、どんな中学生なんですか!

清野 この傾向は今でも変わらないのですが、中学くらいから「虚無」に支配されていて、毎日がな~んにも面白くなかったんですよね。金曜17時半の『何だ?こりゃ』があったので辛うじて生存できていたんだと思います。

西渕 微力ながら、「生存」のお手伝いができてよかったですよ。ご実家は赤羽の隣の板橋ですよね。板橋には赤羽みたいに、そそられるものはなかったんですか?

清野 ええ。板橋という街は少年心には窮屈だったんですよね。実家は赤羽との境界近くにあったので、地図上はほとんど赤羽なんですが、街の面白さは全然違ったんです。

 そんな板橋の実家で、「虚無」に全身を覆われながら『何だ?こりゃ』を観ると、なんかムズムズして、赤羽に遊びに行きたくなってしまうんです。『何だ?こりゃ』と、赤羽の街に似たような「おもしろさ」を感じていたのかもしれませんね。

西渕 最近赤羽にもちょくちょく来てて、そのへんで呑んでたりするんですけど、なかなか「業」の深そうな街ですよね。『何だ?こりゃ』は基本的に、私と何人かのディレクターで毎日のように街を歩いてネタを探してたんですが、おもしろそうな街って、なんか独特のニオイがあるんです。当時赤羽に来てたら、いろんなネタを採取できていたかもしれないですね。

清野 『何だ?こりゃ』の赤羽ネタ! 観たかったです~。舛添(要一)さんの冷静なコメントで赤羽の「何だ?こりゃ」なネタを一刀両断してほしかったです! MCでいうと、左に座っている大竹まことさんは、ちょっと斜に構えてるんだけど、明るい感じで番組を盛り上げていて、中央の相原勇さんは雰囲気作りという感じでいらっしゃったんですけど、舛添さんは冷たいといいますか、無粋といいますか、少年心には大人の当たり前の意見で対象をぶった切ってるような印象がありました。

西渕 あっはっは。そうですね。舛添さんのコメントって、常識的なんですよね。扱ったネタでいうと、当時、扶桑社が入居していたビルの前の歩道に植木が置かれてたんです。ずっと置きっぱなしになっていたもんだから、どんどん大きくなって、発泡スチロールの鉢を突き破って、歩道に根を張っちゃった。で、春になると花が咲いて、実ができて……という感じで、地元の人からも愛される「街の風物詩」みたいな存在になっていたんです。

 ディレクターとしては都会で見つけた「ちょっといい話」みたいな気持ちで取材してきたのに、舛添さんは、「こういう管理不行き届きの植物というのは、やはり迷惑ですよね」みたいな冷静なコメントでぶった切ってて、逆にそれがおもしろいなと私なんかは思ってたんです。

中編に続く

テレビ朝日「タモリ倶楽部」にて紹介。話題沸騰!

SPA!

この連載について

清野とおる「おこだわラブスキー」特集

清野とおる /SPA!編集部

先日、『ゴハンスキー⑤』『その「おこだわり」、俺にもくれよ!!⑤』『Love&Peace~清野流・居酒屋&スナック攻略術~②』を同時発売した漫画家、清野とおる。彼が、中学2年生のときに目撃し、多大な影響を受けたと語る、...もっと読む

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コメント

kotetsu_yama これは観てなかったなあ。観たかった 1年以上前 replyretweetfavorite