疲労は自律神経の疲れのケアが鍵

「疲労は『体を正常に保つ自律神経が疲れているから、これ以上体を酷使しないでくれ』という、脳の自律神経からのメッセージなのです」このように語るのは、東京疲労・睡眠クリニックの梶本修身氏だ。 この脳からのメッセージを無視し続ければ、パフォーマンスの低下どころか、やがて死の危険にも直面しかねない。ここから、梶本氏に、最強の「疲労予防の極意」を学んでいこう。

・疲労は自律神経の疲れのケアが鍵疲れのケアが鍵—「疲労」は、よい「食事」「環境」「休息」で予防しよう

どれほど元気でも、生活の中で疲労を感じたことのない人はいないだろう。 疲労は、もはや「現代病」の一つ—こうした考え方もあるほどに、疲労と現代人とは切っても切り離せないものだ。では、自律神経の疲れをしっかりケアするためには、どうしたらいいのか。

梶本氏は、「食事」「環境」「休息」の三つの実践ポイントを示す。それではこれから疲労とは何かを知り、予防するにはどうしたらいいかを学び、「最強の疲労対策」プランを立てていこう。

専門家が簡単解説!「疲労」の仕組み

・「疲労」とは、体を安定した状態に保つ自律神経の疲れ—「自律神経を司る脳の神経細胞」への酸化ストレス

目が疲れた、体が疲れた、などなど、疲労は起こり方も表れる場所もさまざまに思えるが、元をたどれば疲労は、脳、より厳密にいえば、自律神経機能を司る脳の神経細胞が酸化ストレスにさらされることで起こるという。 梶本氏曰く、「自律神経は、私たちの体が常に安定した状態に保たれるように、心拍や血圧、体温などにおいて細やかな微調整をしています。これを、恒常性(ホメオスタシス)と呼びます。自律神経の働きは体の生命維持機能の要ともいえ、自律神経の機能が一瞬でもストップしたら、私たちは数十秒と生きられません」とのことである。

では、疲労は自律神経の疲れによるものであるとは、どういうことか。たとえば、ゴルフを同じ3時間するのでも、過ごしやすい季節の日本でするのと、年中暑いシンガポールでするのとでは、疲れ具合がまったく違う。 梶本氏によれば「この差は、体温をコントロールするために働いた自律神経の消耗度の差」だという。

自律神経が司る体温調節の働きでいえば、「寒いと体が震える」のも、その一環だ。特に気にもとめないくらい、おなじみの現象だが、これも自律神経の恒常性のなせるわざである。梶本氏は、次のように説明する。

「『寒い』と感じると、自律神経は寒さから体を守るために、血管を収縮させます。その際に皮膚が震えて縮むので、体がブルブルと震え、鳥肌が立つのです」

体が震えるといえば、寒い冬に排尿をすると、一瞬、ブルッとくる。これも尿が出ることで失われた体温を保つためなのだ。 自律神経は、体を安定した状態に保つために、常に働いている。このように、ブルッと震えるといった些細な現象も、すべては体温調整のために起こっていることなのである。

「穏やかな気候では、あまり体温を調整する必要がありません。ところが暑いと体温が上がり、行きすぎれば命を落としかねません。そうなる前に、すかさず自律神経が働き、たくさん汗をかくなどして、体温を調整します。こうして穏やかな気候下では必要のない働きをする分、自律神経は消耗し、それが肉体の疲労感として表れるのです」

つまり、体を安定した状態に保つ自律神経の疲れが、疲労のもとといえるのだ。

「同じ運動によって体に表れるつらさでも、きつめの筋トレなどで起こる筋肉痛は、実際に筋肉組織が壊れたことで起こる痛みです。しかし、筋肉痛を伴わない疲れは、自律神経の消耗を、体が『疲れた』と認識している現象なのです」

・疲労は、自律神経の過労を防ぐ体の防御反応

疲れたままでは、仕事や家事がはかどらない。だから私たちは、疲労を感じると休み、疲れがとれてから物事に取り組もうとする。そういう意味で、疲労とは、体の自然な防御反応だと梶本氏は語る。仮に私たちがまったく疲労を感じなかったら、自律神経は過労状態が続き、やがては消耗しきって動かなくなってしまう。 それを避けるために、「自律神経の疲れは、体のあちこちで『疲労』として感じさせられるようになっている」という。 この疲労を感じさせるメカニズムを、もう少し詳しく説明すると、次のようになる。

「自律神経がたくさん働くと、インターフェロンやインターロイキンといった物質が分泌され、『眼窩前頭野』(目の奥のあたりに位置する脳の一部分)へ送られます。これが、いわば『疲れのメッセンジャー』であり、『自律神経が疲れた』という信号を送る役目を担っています。ただ、単に『自律神経が疲れた』というメッセージでは、確実に体を休めることにつながらないため、まだ体を動かしてしまう可能性があるのです」

だからこそ、体そのものに疲労を感じさせる信号を送ることで、なかば強制的に体を休ませるように仕向けるのだ。梶本氏曰く、風邪をひいたときに体がだるくなるメカニズムも、同様だという。

「ウイルスに感染すると、外界からの異物の侵入に反応して細胞が分泌するタンパク質・インターフェロンが分泌されます。このときのインターフェロンには二つの役割があります。一つはウイルスの活動を下げ、死滅させるために体温を上げること。もう一つが、脳をうつ状態にすることです。脳がうつ状態になれば、当然、活発に動きまわる気分にはなれません。だから、風邪を引くと積極性が低下し、『今日は会社に行きたくない』『ずっと横になっていたい』という気分になるのです。要するに、ウイルスと戦っている体を休ませるよう、体に疲労感を味わわせるという脳のメカニズムが作用しているのです」

・自律神経の疲れは、「活性酸素」によって起こる体に表れる

疲労感は、自律神経の疲れのサイン。では、その自律神経の疲れがいかに生まれるかというと、犯人は活性酸素だという。

梶本氏曰く、「体を安定した状態に保つために働くとき、自律神経の神経細胞は、大量の酸素を必要とします。そのうち1%程度が活性酸素に変化します。酸素そのものは自律神経の働きに欠かせないものです。

しかし、自律神経の神経細胞が酸素を大量消費した『副産物』ともいえる活性酸素は、大量に発生すると、酸化によってもたらされるストレスで細胞がサビてしまいます。そして栄養源があってもそれを利用する『歯車』が回りにくくなってしまい、エネルギーがあまり作られなくなるのです。生命を維持するためには、摂取した食物を呼吸でとり入れた酸素を用いて、酸化分解(燃焼)させる必要があります。

食物中の栄養素は体内に消化吸収された後、さまざまな化学反応を経て変化し、糖や脂質などといった、体の構成物質になります。それらの構成物質はさらに化学変化を起こし、最終的には酸素によって燃焼されます。炭水化物を燃やすと、二酸化炭素と水になり、熱(エネルギー)が出ます。このエネルギーで体温を保ったり、呼吸をしたり体を動かしたりしているのです。肉体労働では主に筋肉細胞が、頭脳労働では脳の神経細胞が、前ページの図のような状態になってしまいます。だからこそ、まずは活性酸素を除去することが、疲れにくい体作りの土台となるのです」

疲労には「仕組み」があり、だからこそ、正しい知識を身につけることで未然に防ぐことも十分可能である。それでは共に、最強の「疲労予防」の極意を見ていこうではないか。

【疲労予防の極意1】

鶏の胸肉摂取で抗酸化物質「イミダペプチド」を補給しよう—目指せ、疲れ知らずの渡り鳥!

・自律神経の抗酸化が、疲れにくい体作りの鍵

疲労は「自律神経の疲れ」のサインであり、自律神経の疲れの原因は、神経細胞が酸素を大量に消費する際に生じる活性酸素であることを我々は学んだ。自律神経が働くには酸素が必要だから、活性酸素の発生そのものは仕方がない。 ということは、発生してしまった活性酸素にうまく対処することが、疲労を予防する鍵となる。

「活性酸素は、細胞を酸化させる(サビさせる)と、自身は消えてなくなります。自律神経が働いている間じゅう、活性酸素が発生しては細胞を酸化させ、消えていく。これが延々と繰り返されているということです。そこで重要なのは自律神経の抗酸化です」梶本氏は、このように説明する。

自律神経を酸化から守ってくれる—そんな願ったりかなったりの物質が、果たしてあるのだろうか。

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tomshirai 自律神経の機能が一瞬でもストップしたら、私たちは数十秒と生きられません 20日前 replyretweetfavorite

eOwW7Gm8imRdfPi #SmartNews #メディカルプロ https://t.co/WtZ4dFtnMY 23日前 replyretweetfavorite

TuduraTuduriya 腹巻きをして寝ると少し疲れがとれる。 https://t.co/a2wVnr4hBu 24日前 replyretweetfavorite

nyaolan この酷暑じゃ自律神経はヘトヘトだよ。 24日前 replyretweetfavorite