赤ちゃんは遊びの中で[予測と確認]を楽しんでいると考えてみると、赤ちゃんのきもちが少しわかってきました。では、この[予測と確認]は、どのような過程を経てできるようになっていくのでしょう。前回登場したジャン・ピアジェの理論をひもといてみます。
ピアジェは赤ちゃんから青年までの発達を研究し「知能の発達には段階がある」ということを解き明かした発達心理学者です。実験室を使わず、自分の3人の子どもの行動観察にもとづいて理論を立ち上げています。
赤ちゃんの成長は「反射」からはじまる
ピアジェは子どもの発達をいくつかの段階に分けています。 0〜2歳は感覚でいろいろ確かめる時期、3〜6歳は言葉はつかえるものの自己中心的な世界、7〜11歳から少しずつ他者を理解し、12歳からは社会の仕組みや哲学など複雑なことを考えるようになる、という感じです。その中でぼくが「赤ちゃん」と呼んでいる0〜2歳までは「感覚運動期」にあたります。感覚運動期の発達は下のような流れになっています。
ピアジェの理論では、物や自分の身体の認識は「反射」から始まります。さまざまな状況に対して反射的に行っていたことが、次第に意識してできるようになっていきます。そして、自分の身体を確認します。次に物に触って確認し、その後段々と物の動きや因果関係の認識ができるようになり、意識して身体と物を操作しようとする、と考えられています。では、ひとつひとつのステップを見ていきましょう。
1. 反射
生後1ヵ月頃までは「反射」の時期とされています。赤ちゃんの身体は、指をおくと手を握り返してくる「把握反射」、ほっぺたや口に触れた物を探す「探索反射」、唇に当たった物を吸う「吸啜(きゅうてつ)反射」など、さまざまな反射をもっています。反射が引き出す動作は、ご飯を食べたり運動をしたり姿勢を保持したり身を守ったりすることにつながっていると考えられていて、とても興味深いです。ミルクを飲んだり、ママやパパと関わったりするなかでこれらの反射を繰り返し、さまざまな動きのパターンを脳と身体が記憶していきます。
全身の力が脱力して、視界もぼんやりしている状況を想像してください。目に映る物の意味も自分の身体の輪郭も使い方もよくわかりません。ときどき声が聞こえたり、顔に人の手や哺乳瓶が当たったりして、それに対して自分の意思に関係なく身体が動きます。その動きを身体の感覚が捉えていき、ちょっとずつ動かし方がわかってくる。生まれたばかりの赤ちゃんの世界は、そんな世界なのかもしれません。
2. 自分の身体を確かめる
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