写真家のワタナベアニです。「写真家」というと政治家のような印象があって偉そうに聞こえるかもしれませんが、そうではなく、写真を撮ることをやめられない人、つまり「浪費家」くらいの意味です。仕事の撮影が終わると「さて趣味の写真でも撮るか」という毎日。会社で経理の仕事をしている人が、帰宅して楽しそうに家計簿をつけるようなものです。たとえた分だけわかりにくくなってますけど。
仕事の撮影には目的がありますが、こういった写真は何も考えずに、好きなように撮っています。友人に会うと「ちょっとそこに立って」と言いながら撮り、誰かを紹介されても初対面の挨拶がわりに撮る。街で通りがかりの人すら撮ります。
誰でも、子供の運動会や家族旅行の記念写真などを日常的に撮っていますよね。その「家族の概念」を、出会う人全員に置き換えているんです。愛する家族や友人は撮るけどそうでない人は撮らないなんて、差別です。写真を撮ると、今まで知らなかった人が「知っている人」に変化します。世界中に今まで写真を撮らせてもらった人がたくさんいて、互いの人生の中で数分しか重なり合っていないとしても、出会った記録が残っている。それが写真のいいところなのです。
Parisのパン屋さんに黒バックを設置。パンを買いに来るお客さんを次々に撮影。
友人のアーティスト・マーティ。どう撮っても格好よくしか写らないのが難点。
カフェのお姉さん。ちょっとシャイで、その雰囲気がいい。
友人宅の近くにヨガスタジオがある。そこに通う人を一網打尽に撮らせてもらった。
サイクリストチームのメンバーを撮影。俳優ができそうな人が何人もいた。
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