今日つくる『キュウリもみ』と『キュウリのゴマ和え』は地味ですが、『塩梅(あんばい)』を理解するのに最適な料理。塩梅とは味付けの基本だった塩と梅酢のことですが、今では味付け加減全般を表す言葉です。味付けの練習のつもりで挑戦してみてください。とはいっても工程自体はとても簡単です。
キュウリもみ(2人前)
キュウリ 1本(120~150gg)
乾燥ワカメ 1g(水で5分戻す)
塩 キュウリの重量の1%
米酢 小さじ2
まずはキュウリの選び方から。夏が旬のキュウリ、栄養はあまりありませんが、水分補給にうってつけの野菜です。表面にトゲがあり、淡い緑色で、整った形のキュウリを選びましょう。
「このキュウリは曲がっているけど、無農薬のおいしいキュウリです」 という売り文句がありますが、健康なキュウリはまっすぐに育ちます。曲がる理由は何かにぶつかったか、生育途中の水分や養分の過不足が疑われます。多少の曲がりは味に影響しませんが、あまりに曲がっているキュウリは生育不良のため、えぐみや苦みなどが強い可能性が高いです。
1.キュウリはへたを切り落とし、小口切りにする。
*へたまわりの苦み
昔、キュウリはへたのまわりが苦かったので、その部分の皮を剥いたりしましたが、現在のキュウリは品種改良が進み、ほとんど苦くないので、硬い部分を切り落とすだけで大丈夫です。ちなみにこの苦みはククルビタシンという成分。キュウリが害虫を遠ざけるために自ら生成する物質で、大量に摂取すると有害です。
また、キュウリを日向に放置しておくとギ酸が増えて、渋くなります。その場合にはキュウリに塩を振って、まな板の上で転がします。これは『板ずり』という技法で、この作業を行うと表面からギ酸が溶出し、苦みを感じにくくすることができます。コールドチェーン(低温流通)が確立した現在ではほとんど必要のない下処理ですが、夏場の日向に放置したキュウリを使う場合には有効です。
キュウリの薄さは1mmが目安。あまり厚いと塩が入っていかず、薄すぎると食感がなくなります。こうしたやわらかい野菜を切る場合、包丁は刃先の薄い部分を使うと、摩擦が減り、断面がきれいになる=口当たりがよくなります。逆にニンジンなどの硬い野菜を切るときは根本に近い部分を使うのが基本です。
小口切りはスライサーを使っても同じようにでき、包丁とスライサーで比較実験をしても味の差がわかる人はほとんどいないようです。ただし、条件は刃の鋭いスライサーを使うこと。写真のスライサーは「ベンリナー」(株式会社ベンリナー製)です。
2.キュウリの重量1%の塩を振って手で和え、5分置く。
*キュウリと塩の量の関係
キュウリの重量の1%の塩と書きましたが、実はキュウリの厚さによって塩加減は異なります。厚みがあると食塩の浸透が遅くなり、脱水が進まないからです。薄く切れないという人は塩の量を1.5~2%に増やし、5分置いて軽く絞ってから使うといいでしょう。しかし、水気と一緒にキュウリの味は抜けてしまうので、この料理の本当のおいしさは味わえません。
1%というのは写真の量。実際の料理ではいちいち計ってはいられませんから「これくらいの量!」というのを憶えておきます。はじめはしょっぱかったり、物足りなかったりするかもしれませんが、繰り返しつくっていくうちに自然に上手にできるようになります。
*もみ込む必要はない
キュウリもみという名前ですが、手で軽く和えるだけでもみ込む必要はありません。この状態でもみ込むとキュウリが割れてしまうので、塩を振って置いておくだけでOK。
今回は量が少ないので直接、塩を振りましたが、たくさんのキュウリを仕込む料理屋などでは「立て塩」といって、3%の塩水に漬け込むことがよくあります。塩水を使うことで均等に浸かるからです。料理屋さんでは「立て塩で殺す」と物騒な言い方をしますが、味が抜けるというデメリットもあるので、状況に応じて使い分けます。
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3.キュウリがしんなりとしたら、味見をしながら酢小さじ2を加える。