漫画『タッチ』や『めぞん一刻』にも共通する、『半分、青い。』に見られる重要な法則とは?
今期の朝ドラ、『半分、青い。』。
あなたは見てますか! わたしは見てます!
cakes読者の方々がどれほど『半分、青い』を視聴しているのかは謎ですが、わたしは毎朝「今日の『半分、青い。』はどうなるんだ……」と呻きながら目覚ましを止めるくらいには、敬虔な朝ドラ・ウォッチャーです。
しかし、しかしですよ。
今回の朝ドラ、すごい。
何がすごいって、前半、見ててほんとつらかったところが、すごい。
さらりと説明しておきますと、『半分、青い。』とは今期のNHK連続テレビ小説(通称朝ドラ)。先日、永野芽郁ちゃん演じる主人公(楡野鈴愛(すずめ))が漫画家を目指して奔走し、結局、鳴かず飛ばずで夢破れたところで前半が終わりました。
そう……鳴かず飛ばずで、夢、破れるんですよ!
わかりますか! 朝の清々しい15分を使って見ていたら、いきなり、主人公が夢破れていく様を見る我々視聴者の気持ちが!!
もう見てて気が気ではなかった。主人公が徐々に漫画家を諦めてゆくの、つらすぎた。おそらくわたし以外にも主人公に自分を重ねてつらくなった視聴者さん、たくさんいたはず……。
しかも『半分、青い。』前半のつらさは、夢破れるとこだけじゃないんです。ずっと主人公の相手役として登場していた幼馴染(佐藤健さん演じるイケメン、萩尾律)が、突然、まったく知らない相手と結婚したんですよ! 視聴者びっくりしましたよ! おいっ、きみは主人公と結婚する役回りではなかったのか!?
はい、思わず興奮してしまいましたが、そんなわけで『半分、青い。』前半は、主人公が28歳にして結婚も仕事も敗れたところで終わったのでした。
『半分、青い。』を見ていた方は、みんな思ったはずです。
「なぜ『半分、青い。』は、物語の半分を使って、夢と恋の挫折を描くのだろう……?」と。このやるせない疑問に対して、私は今回、一冊の本を解答にしてみたいと思います。大塚英志という批評家による、『人身御供論』という本です。
『人身御供論』大塚英志
(KADOKAWA)
この本、とくに朝ドラを論じた本なわけでも、『半分、青い。』を紹介した本なわけでもございません。だけどこの本を読むと、『半分、青い。』が今まで以上に理解できるんです!
そんなわけで今日は、朝ドラを見ている方も見ていない方にもおすすめしたい、「これを読めばもっと朝ドラを楽しめる!」という一冊をご紹介したいと思いますっ。
1.『半分、青い』のあらすじと、謎~佐藤健が田舎の幼馴染なんてそんな~
さて、先程ヒートアップして一気にご紹介しましたが。『半分、青い。』は、左耳の聴力を失った主人公・鈴愛が漫画家を目指して上京、そしてその夢が破れるところで前半が終わりました。
前述したとおり、ずっと鈴愛をそばで支えていたのが、幼馴染・律(りつ)。律は「神童」と呼ばれるほど頭の良い少年だったゆえに、人生いつも危なっかしい鈴愛をサポートしながら成長します(律は大学進学、鈴愛は漫画家のために上京するも、近くに住んだりする始末)。
まぁ、佐藤健さん演じるイケメンな幼馴染なんて、そりゃーヒロインの相手役を期待しますよね! 律は一度、なんと鈴愛にプロポーズまでしていたんです。
しかし、とあるすれ違いから、鈴愛と律は付き合うこともなく、律はまったく別の人と結婚します……。
なんで!? ねえ、なんで唐突に律はほかの人と結婚したの!?
2.なぜ佐藤健は見知らぬ人と結婚したのか?~『人身御供論』を読もう~
そんな疑問に答えてくれるのが、今回おすすめしたい『人身御供論』(大塚英志、角川文庫)。
1994年初出(なんと24年前!)なのですが、『遠野物語』『ホテル・ニューハンプシャー』『タッチ』『トーマの心臓』『めぞん一刻』等々あらゆる物語にあてはまる「ある法則」を見つけたという偉業を達成した本なのです!
その法則とは……「主人公が大人になる物語」では、「最初の求婚者」が死ぬ、という法則。
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