”天才”は継続でつくられる

東大を首席で卒業、財務官僚、弁護士など、華々しい経歴を持つ山口真由さん。自身のキャリアを「才能ではなく、努力を続けることでつかんだ」と断言する彼女が語る、「努力を技術化し、天才的成果を上げるためのメソッド」を連載「天才とは努力を続けられる人のことであり、それには方法論がある。」でご紹介します。

 継続はゆるぎない自信をくれる

 シドニーオリンピック直前の、谷亮子さんの言葉を覚えている方も多いのではないでしょうか。

 彼女は、大事な試合の前に度々負傷しているらしいのですが、シドニーオリンピックの1ヵ月前にも左足首の腱を損傷しました。そのため、オリンピック前の1ヵ月間、彼女はほとんどまともに練習できなかったそうです。

 そのことについて、シドニーオリンピック直前に、テレビ局のレポーターが彼女に直撃しました。

「足首の状態はどうですか? 練習ができていないそうですが、不安はありますか?」

 それを聞いて、ふっと笑い、谷亮子さんはこう答えました。

「7歳のときから毎日練習してますから」

 インタビューを観ていた私は、思わず鳥肌が立ちました。

 7歳の時から、長い長い間積み重ねてきた辛い練習に比して、1ヵ月程度のブランクなど怖るるに足らずと言ってのけたのです。

 この自分の努力量に対する自負は凄まじいとしか言えません。谷選手は、「当然」金メダルを獲るものと期待されていました。金メダルを獲ったら、もちろんみんな褒めてはくれるでしょうが、決して驚かれることはありません。そして金メダルを獲れなければ、たとえ「銀メダル」でも、みんなに「残念」という評価をされてしまうのです。

 この重圧は一般人の私からは想像もできません。ただ、この状況で、怪我をし、この質問を受けたら、誰だって予め逃げ道を用意しておきたいと思うはずです。

「思うように調整ができていないので不安は残りますが……」

 このくらいの回答をしても、醜悪な言い訳をしているようには映りません。それにもかかわらず、彼女は一切の言い訳をしませんでした。

 おそらく、日々の練習の密度に対する自負もあるのでしょう。

 大学時代に、私はラクロス部のマネージャーをしていました。引退前の最後の大学選手権を控えた先輩の言葉は忘れがたいです。

「今日の1日も1年生のときの1日も同じ長さだったんだな」

 誰だって引退試合前には真剣になります。1日の練習も濃密なものになります。

 しかし、1年生の時から1日1日気迫を込めて練習することは容易ではありません。疲れて、手を抜く日もあります。暑くて練習に身が入らないときもあります。

 どんなに毎日練習を積んできても、大会前に調整をできないのはやはり心許ないです。

 しかし、谷選手は、日々、「明日はオリンピック」というレベルで、濃密な練習を積んできたというのが、インタビューの様子からわかりました。

 たとえば、自分が常に模試で1番を取っていたと想像します。それで、大学受験の1週間前に風邪を引いて寝込んだとしましょう。そのとき、お見舞いに来た親戚に、「直前に追い込みができなくて不安はない? 大学受験ではやっぱり1番取れるかしらね?」と聞かれて、「7歳の時から毎日勉強してますから」とさらりといえるだろうか。

ベストな状態でないなかでベストを尽くす

 漫画『エースをねらえ!』で、「お蝶夫人」こと竜崎麗香も、努力に関連する名言を残しています。

 主人公の岡ひろみが対戦相手の母から再試合を迫られる場面です。対戦相手は途中で手首を捻挫して実力を出せなかったというのです。

「あの子は実力が出せなかったのよ。あなたも、そんな彼女に勝っても不本意でしょ。あの子のベストの状態で再試合をしましょう」

 それを、岡ひろみから聞いた竜崎麗香は、「そんな人はどんなにうまくても、テニスをする資格はない」と切り捨てました。

「みんな、ベストな状態で試合をできることなんてないのよ。それでもその状態でベストを尽くすものなのよ。自分がベストな状態ではなかったと言い訳する人、そういう人達にはテニスに対する敬意と集中力がないのよ。審判の判定が不利だと不服を言い、やれ暑い、やれ寒いと天候さえ自分に不利であるかのように語って、自分の負けを認めないのよ。対戦相手の勝利を讃えることができない人には勝負をする資格はない」

 自らに対する厳しさがにじみ出るような言葉を、彼女は語りました。

 もちろん、谷選手のようなプロフェッショナルになるのは、私たち一般人には難しいでしょう。お蝶夫人のように、そこまでストイックに厳しくもできないかもしれません。

 しかし、努力というのは、7歳の頃から毎日、とまではいかないでしょうが、やはり、継続させなければ意味がありません。

 24時間テレビを見た後に、感動して、マラソンを始めることは、誰でもできます。しかし、これを毎日、続けていくことは、ほとんどの人ができません。つまり、努力を継続させることが難しいのです。

 次週からは、どうすれば努力を継続的に行うことができるのか、について述べていきたいと思います。

本連載が一冊にまとまった新書版

この連載について

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天才とは努力を続けられる人のことであり、それには方法論がある。

山口 真由

東大を首席で卒業→財務省官僚→弁護士→ハーバード留学という経歴を持つ山口真由さん。山口さんいわく、「私は天才ではない。普通の人」であり、「天才的な成果をあげることができるのは、努力を続けられる人だけ」という。努力を続けることこそ、最も...もっと読む

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コメント

sena_spz え?山口さん東大ラクロス部のマネージャーだったの?いつまでいたんだろ… 4日前 replyretweetfavorite