では、ホモ・アストロルムはいかにして宇宙を旅するのだろうか?
もしかしたら本当に宇宙人たちはUFOを使っているのかもしれない。もしかしたら、反重力装置やワープ航法や波動エンジンの特許はとうに切れていて、技術資料が銀河インターネット上に公開されているのかもしれない。
あるいは、未来には人工冬眠の技術が確立したり、人間の寿命が大幅に伸びたりするかもしれない。そうなれば急ぐ必要はない。鶴亀でなくとも千年でも万年でも航海できる。ボイジャー1号の速度でも、7万5千年あればアルファ・ケンタウリに行くことができるのだ。
だが、時に僕は思う。もしかしたら、宇宙船に乗って宇宙を移動するというスタイルは、人類の現在の常識に縛られているのではないか?
確かに現在の人類にとって「移動」とは乗り物に乗って肉体を運搬することを意味する。だが、果たして人類より何万年も進んでいる宇宙人が現代人類と同じように物理的な移動を行なっているのだろうか? UFOから二足歩行の宇宙人が降りてくるというのは、現代の常識に縛られた乏しいイマジネーションではなかろうか?
たとえば、NASA JPLとマイクロソフトが共同開発した「OnSight」というシステムがある。JPLが持つ火星の三次元データをマイクロソフトのホロレンズというVR(バーチャルリアリティー)グラスと融合させることで、火星ローバーのオペレーターは仮想現実の中で火星を歩きながらローバーに指示を出すことができる。
NASA JPLとマイクロソフトが共同開発したOnSight。ヘッドマウント・ディスプレーを装着することで、三次元の火星の上を「歩き」ながらローバーに指示を送れる。(Credit: NASA/JPL-Caltech)
もちろん、現在の人類のVR技術はまだまだ後進的で、五感のうち二感しか再現できない。僕もOnSightを試したことがある。三次元の火星の風景の中を歩けることに興奮したが、ホロレンズは重く、視野は狭く、僕の行動に対して環境からのフィードバックもなく、現実世界を歩くのとはまだ隔絶した差があった。
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