だが、滅びは人類の定めではない。人類は賢くなれる。人類は未来を変える力を持っている。そう僕は信じている。
もし、手遅れになる前に、世界の国々が自国の経済成長だけでなく人類全体の利益のために手を取り合い行動する叡智を持てたならば。もし政治家に来年の選挙のことではなく百年、千年先の社会の繁栄を慮る良心が備われば。もし企業に株主価値の向上だけではなく人類文明の向上に対して責任を担う自覚が芽生えれば。もし消費者が自らの物質的豊かさの追求だけではなく、自らの行動が地球の裏側に住む仲間に与えるインパクトを想像できるイマジネーションを持てたならば。
人類は待つことができる。そして百年ないし千年のスパンで、その日は必ず訪れるだろう。地球外文明からのメッセージを人類が受け取る日が。
そこには何が書かれているのだろうか?
カール・セーガンのSF『コンタクト』では、ある「機械」を建造する方法が書かれていた。『2001年宇宙の旅』では、モノリスは無言で人類を次のステージへ導いた。
そこに何が書かれているか? もちろん知る方法はない。だからイマジネーションは完全な自由を与えられている。あなたは、何が書かれていると想像するだろうか?
僕はこんな想像をしている。「銀河インターネット」への接続法が書かれているのではなかろうか?
「銀河インターネット」とは僕の完全なイマジネーションだが、全くの無根拠でもない。先に、太陽から1000天文単位ほど離れた太陽の重力レンズの焦点に宇宙望遠鏡を浮かべれば、系外惑星の大陸や街も見ることができるかもしれないと書いた。
同じ場所に中継衛星を置けば、太陽系サイズのアンテナになる。向こう側の星系の重力レンズ焦点にも同様の中継衛星を設置すれば、何百、何千、もしかしたら何万光年離れた文明と大容量通信が可能になる。つまりは銀河のブロードバンドだ。
銀河インターネット
もしかしたら、銀河に散らばる無数の文明同士は、それぞれの星の重力レンズを使ったブロードバンド網を張り巡らしているかもしれない。それぞれの文明は近傍のいくつかの文明と接続するだけでいい。それぞれがルーターとして機能すれば、インターネットのように銀河の反対側の情報もネットワークを介して得ることができるだろう。この「銀河インターネット」を使って、それぞれの文明が誇る科学的知識や技術、文化、芸術、美しい風景の写真や音楽を、何万光年という距離を超えて交換し合っているかもしれない。
もちろん、光の速さは有限だから、直径10万光年ある銀河の反対側にメールを送ってから返事を受信するまでに20万年かかる。成熟した文明は気長でなければならない。だが、返事を待たなくとも、すべての文明がすべての知識をネットワークにアップロードしてしまえばいいかもしれない。数光年先の最寄りのミラーサーバーに問い合わせれば、銀河全ての知識がすでに保存されているかもしれない。
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