女子大生と世界最強の殺し屋

「受注数世界一の、殺しの会社を創りたい」
世界一売りづらい「殺し」を売るための会社作りに奮闘する女子大生、桐生七海の師匠であり、「最強のマーケティング技巧」を持つ西城が銃弾に倒れた。師匠を失った七海を取り巻くようにさらなる事件が起こり、そして物語は衝撃のラストへ――。今話題の書店経営者が初めて書く新しいマーケティング&エンタメ小説、第48回。

上空からも銃口が火を噴くのが見えた。

「あそこ、降りることできませんか?」

ヘリコプターの操縦士に、響妃が指示をする。洋館の庭園の南端、湖に面する場所だった。操縦士は、響妃に親指を立ててみせた。

ヘリが降下するにつれて、洋館の周囲の雑木林には狙撃部隊がいるのを目視できるようになった。また、洋館の南側にいる二人が、銃を向け合って対峙しているのが見えた。左側のほうは、白のワンピースを着て、風にスカートをなびかせていた。

「桐生七海!」

完全に視認したわけではなかった。けれども、秋山にはあれが七海のような気がしてならなかった。

「カメラ、撮れる?」

響妃がカメラマンに指示する。ヘリコプターのドアを開け放って、地上にカメラが向けられ る。

「おい、おい、おい、落ちるって!」

秋山が座席にしがみついて騒ぎ出す。

「あのヘリコプター、何とかならんのか!」

桐生は無線に向かって言う。テレビ局のものだということは、ロゴによって明らかだった。ここをまともに撮影されてはまずい。

「陸路、水上は完全に侵入を塞ぎましたが、空中はノーマークです」

それはそうだ、と桐生は思う。今回の秘密作戦は、空中からの闖入者がいることなど、そもそも想定していないのだ。マスメディアは児玉が工作して桜田門の警視庁に食らいつかせたはずだった。そこに七海を保護していると思わせた。

けれども、右にならえをよしとしない人間がいるようだ。  
間違いない、と桐生は思った。相川響妃だ。  
いっそ、一斉に威嚇射撃をしてヘリを遠ざけたかったが、それをカメラで撮られれば、マスコミにどう叩かれるかわからない。  
地上に目を戻すと、日向涼と七海が銃口を向け合って対峙していた。

まずい状況だった。  
桐生は近くの若いスナイパーに声をかけた。

「標的まで距離はどれくらいだ?」

「距離、一八〇!」

「違う、それでは外す。貸してみろ」

桐生はその若いスナイパーに代わって、伏せ撃ちの体勢を整える。  
常に教えてはいるが、自分が伏せ撃ちで構えるのも随分久しぶりな気がした。けれども、どうやればいいかは、身体に染み付いている。  
大丈夫、行ける、と桐生は感覚的に思った。  
試しに照準器を合わせてみた。日向涼の胸を狙う。

「距離二〇五。狙い十分……」

トリガーに人差し指をかけ、感触を確かめる。懐かしい感触に、アドレナリンが大量に分泌されるのがわかる。   安全装置は、大丈夫、外してある。   弾道は、おそらく、まっすぐに、サイレンス・ヘルの胸を貫くだろう。

唐突に、サイレンス・ヘルこと日向涼は、七海を見据えたままに、銃口を空へと向けた。そして、ろくにそちらを見ることもなく、空に向かって銃弾を放った。

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殺し屋のマーケティング

三浦崇典

「受注数世界一の、殺しの会社を創りたいんです」 女子大生、桐生七海は本気だった。「営業」ができない、「広告」も打てない、「PR」なんてもってのほか、世界一売りづらい「殺し」をどう売るか――、そんな無理難題を「最強...もっと読む

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