■技術29 質問をしながら「人間」にせまる
「軍人・小池百合子」への期待
小池さんの愛読書に『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』があります。戸部良一、寺本義也、鎌田伸一、杉之尾宜生、村井友秀、野中郁次郎の六人の研究者による旧日本軍の戦史研究書で、一九八四年にダイヤモンド社から刊行され、後に中公文庫に入りました。
内容は、ノモンハン事件、ミッドウェー作戦、ガダルカナル作戦、インパール作戦、レイテ沖海戦、沖縄戦と、第二次世界大戦前後の大日本帝国の主要な失敗策を通じ、日本が敗戦した原因を追究しています。結局、二正面作戦をとらない、組織全体の意思統一を図るといった結論にいたるのですが、平成二十九年の小池さんのやり方は、この本の教えに沿っていたとは言い難いと感じています。
都知事でありながら希望の党の代表になって、自民党に闘いを挑むというのはあまりにも同時多発戦略が過ぎます、ですから、選挙の後に代表を降りたのは、そうした同時多発戦略の彼女にとっての「リセット」であったと僕は考えています。
小池さんの都知事の任期は二〇二〇年七月までです。オリンピックまでは都政に邁進したほうが自分も含め、誰にとってもいいことだと判断したのでしょう。いったん自分の状況をシンプルにして、「失敗の本質」を検証、反省し、じっくり自力を養おうとされているのではないでしょうか。
オリンピックは何もしなくても盛り上がります。そのオリンピックの舞台が東京である以上、知事である自分がその中心になります。国政から離れて都政に専念して三年間やって、任期を終えて、さらにもう一期やるのか、国政に戻るのかはそのときに考えればいいということではないでしょうか。
総選挙で大敗して、希望の党の代表を降りられて、小池さんはもう終わりだと思っている人もいますが、僕は、これからの「軍人・小池百合子」の面目躍如たる展開の可能性はまだあると思っています。
政治家としてのライフプラン
そもそも小池さんはどうして自民党を飛び出して東京都知事になり、それをまたすぐ国政に戻ろうとしたのか、そこのところの考えが僕には分かりません。多分複雑な思いや計画があるのだと思いますが、そういうものがあるなら、そう簡単に国政への復帰をあきらめるとは思えません。
都知事の任期の三年間の間に、統一地方選挙や参議院選挙があるかもしれませんが、小池さんはそれらにどこまで深くコミットするのか、慎重に判断すると思います。じっくり都政に専念して次の機会を待つのも選択肢の一つでしょう。
そういう時期の小池さんにはぜひお話を聞いてみたい。番組への出演が無理なら、個人的にお茶を飲みながら話をするだけでも構いません。 「知事を普通にやるだけよ」とおっしゃるだけかもしれませんが、それはそれでいいのです。
小池さんに限らず、政治家の方々は大変なエネルギーを持っている。そのエネルギーにメディアが振り回され、世論が巻き込まれて大騒ぎになったのが、平成二十九年の小池劇場です。
都市は常に「パン」と「サーカス」を求めていると言われます。僕は別に小池政治がサーカスだといっているわけではありません。小池百合子という政治家の根本に何があるのかを知りたい。それを、番組を通して視聴者に伝えたいのです。
けれど、それは彼女の政治家としてのライフプランですから、そう簡単にメディアで話すことはないでしょう。しかし、僕としては取材を重ね、番組に出演していただきながら、その部分に近づいていきたいと思っているのです。
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