家での食事と外食、魚料理を食べる機会はどちらが多いですか?
農林水産省の統計によると、84%の人が魚料理は「内食(家で調理して食べる)」と答えています。ほとんどの人が家で食べている魚料理をおいしくできれば、生活のクオリティは向上するはず。
というわけで今日のテーマは魚料理。なかでも今日はシンプルな「焼き魚」を解説します。
同じ統計で逆に「外で食べる」理由として挙がっているのは
1位「(外食または中食で食べる方が)美味しいから(65.0%)」
2位「調理が面倒だから(52.6%)」
3位「家族が求めるから(25.5%)」
というもの。
まず、『調理が面倒』という昔からある意見ですが、魚を料理すること自体は簡単です。
肉と魚ではタンパク質の構成が異なります。陸上で生きる動物は自分の体重を筋肉で支えなくていけませんが、水のなかで生きている魚は浮力のお陰で、その必要がないからです。そのため、筋肉が弱い=やわらかいので、生で食べられるのです。魚は肉と比べるとタンパク質の変性温度も低く、短時間の加熱で済みます。結果的に調理時間は短くなるので、手軽に調理できるのです。
魚料理で面倒なのは、むしろゴミの処理でしょう。最近、スーパーなどでは「ゴミ回収日の前日しか魚が売れない」と言われていますが、たしかに一匹の魚を買うとどうしても内臓などの生ゴミが出ます。
解決策は「切り身」を買うこと。「切り身」はお魚屋さんや鮮魚担当者がきっちりと下処理を済ませてくれたものです。購入して、家に帰れば、すぐに調理にとりかかれますし、ゴミもほとんど出ません。
もちろん、魚は切った瞬間から鮮度が落ちていきます。魚屋さんでおろしてもらうのが理想的です。頭や中骨の料理は慣れてきたら挑戦することにして、
「三枚おろしにして、適当な大きさの切り身にしてください。頭と中骨はいりません」
と頼めば、可食部位だけをパックにしてくれます。
魚は氷水に沈めて保存する
魚を扱う時に気をつける点は保存温度。購入してきた魚はキッチンペーパーで水分をふき取ってからラップで包むか、空気を抜いたビニール袋に入れ、氷水に沈めた状態で冷蔵庫に入れるのがベター。
普通、食品を保存する場合は冷蔵庫に入れるだけで充分ですが、魚だけは例外。冷たい水のなかで生きる魚はそうした環境に適応した酵素を持っており、冷蔵庫の温度ではその酵素が活発に活動してしまうのです。
マギーキッチンサイエンスによると、魚を氷温(0℃)で保存すると、冷蔵庫(5℃〜7℃)で保存するよりも2倍(魚の種類によって異なりますが、1週間〜3週間は食用できる)長持ちするとのこと。
氷水に沈めた状態で冷蔵庫に保存する場合は、一日一回、溶けた分の氷を足すだけで氷温(0℃)を維持できますが、それが面倒というのなら悪くなる前に食べてしまいましょう。
とれたての魚には匂いがありませんが、時間を置くと酵素によってタンパク質が分解し、生臭みの原因であるトリメチルアミンという物質が生成されます。これは酸性の物質で中和できるので、魚料理にはレモンやスダチが添えてあることが多いのです。調理する前に生臭みを感じたらレモン汁か酢で表面をさっとすすぎましょう。
知っておきたい3種類の加熱方法
昔から魚を焼くときのコツは「強火の遠火」といわれています。これは魚を七輪の炭火で焼いていた時代の言葉で、炭火の強い火で、しかもある程度距離を離して焼くといい、という教えです。
どういうことでしょうか? 炭火に近づけて焼くと、中まで火が通るより先に表面が焦げてしまいます。そこで、火から距離をおく=遠火にすることで、放射熱の範囲を広げ、全体を均一に加熱します。
また、弱い火で魚に焦げ目がつくまで焼くと時間がかかるので、結果的に水分が蒸発し、パサパサになってしまいます。そこで焦がさないようにしつつ、強火で短時間に焼く必要があり、それには炭火の放射熱が最適なのです。