皆さんは何かに興味を持った時に、まずは形から入ったことはありませんか? 実はこれは決して悪いことではありません。例えばジョギングを始めようと思ったら、とりあえずおしゃれなシューズとウェアを揃えてみるのも一つの方法です。結局、タンスの肥やしになるかもしれませんが、「オシャレだから着て走ってみたい」とモチベーションが高まって、いつの間にかいっぱしのランナーになることもあり得るわけです。モノを買うことで行動を変えるということですね。
ただ、私たちは、このようなポジティブな理由だけで、モノを買うわけではありません。中身のない自分をモノで補おうとする場合もあります。例えば、仕事ができる先輩が、数十万円のスーツを着ているという話を聞いて、自分もその店に行ってみるなんてことがあります。それはまさに「仕事に自信がない」という負い目、ネガティブな欠点を、外見で補っているということになるのです。補うべき欠点があるとき、消費で補おうとすることを象徴的自己完結と言います。
まっとうに考えると、仕事を頑張って覚えることで社会人として成長することが望ましいと言えます。しかし人間はそんなに地道ではないので、手軽な方法を取ろうとします。その方法のひとつが、消費による象徴的自己完結なのです。
興味深いことに、その若い社会人が経験を重ねていくと、消費で補おうとすることはなくなっていきます。なぜなら社会人として成長して仕事ができるようになり自信がでてくるようになると、モノで自信のなさをごまかす必要がなくなるからです。
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