大学1年生の歩き方

わかりやすさを捨て、モヤモヤ耐性を身につけよう

自分は何がしたいのか、この先どうなりたいのか、今すべきことは何か……。全然わからず、自分が空っぽであることにショックを受けた桃山商事の清田隆之さん。空っぽであることに焦りすぎないで、と当時を振り返ります。
「受験型モデルに飛びついても、タマネギの皮を厚くするばかりで肝心の空洞は埋まらないのです。」
(書籍『大学1年生の歩き方』より。著者二人の対談「失敗したって、どっこい生きてる」も。)

空っぽな自分に絶望しかけた6月

大学1年の6月。同級生たちがサークルの先輩からガンガン告白されていたことなどつゆ知らず、私はひたすら途方に暮れる日々を送っていました。入学式から続く刺激と緊張がひと段落し、通常運転に入った大学生活。まさに「入学マジック」が解け、いよいよ現実を直視せねばならない時期が訪れたのです。

クラスがあり、イベントがあり、授業も部活も用意された選択肢から選ぶだけだった高校時代に比べ、大学生活というのは自由度が格段に上がります。相変わらず高校生みたいな暮らしを続けることも可能だし、社会人を相手にビジネスしたり、何かアクションを起こして政治に働きかけることだって可能です。私が大学生だった頃は、自分の名刺を持って企業からイベントの協賛金を集めてまわっている学生(広告を研究する大きなサークル!)や、サッカーボールを募って途上国の子どもたちにプレゼントするプロジェクト(意識高え!)を起こした学生もいました。私はそんな同級生たちを見て、猛烈な焦燥感を覚えていました。

自分は何がしたいのか。この先どうなりたいのか。今すべきことは何か。いろいろ全然わからなくて焦りまくりです。みんなに差をつけられ、取り残され、思い出も達成感もないまま終わってしまいそうなあの感じ……。当時の私は「空っぽな自分」にマジで絶望しかけていました。

そんなときに足繁く通っていたのが書店と図書館です。目的は、新書と参考書のチェックでした。新書というのは2005年に『バカの壁』(養老孟司・新潮新書)や『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』(山田真哉・光文社新書)などの大ヒットによって一大ブームを迎えますが、これはそれよりも前の話。当時の新書は「経済とは何か」「哲学とは何か」「宇宙とは何か」みたいな大テーマの本が主流で、私は「これ一冊読むだけで経済や哲学がわかるのか!」と大きな期待を寄せました(これぞバカ)。また、参考書というのは漢字検定や日本語検定、歴史検定やTOEICといった資格試験のテキストでした。資格を取れば取るほど頭が良くてすごい人間になれる……。そんな思いにも取り憑かれていました。

しかし、結果から言うと新書は難しくて全然読めなかったし、資格ゲッターにも一切なれなかった。単にお金と時間を浪費しただけ。大学の授業に出ていた方が百倍マシでした。

「やるべきこと」を与えて欲しい病

ではなぜ、そんなことをしていたのか。私が求めていたのは、かつての受験勉強が示してくれたような「目標」と「カリキュラム」でした。つまり、高校や予備校の先生みたいに「ここからここまで勉強しろ」「そのためにはここから段階的に学んでいけ」と言ってくれるメンター的存在が欲しかった。その役割を、私は新書や資格試験の参考書に求めていたというわけです。

このマインドは案外笑えないもので、大人になっても消えません。というか、大人になるほど強くなると言ってもいいかもしれない。なぜなら、大学よりも社会の方が圧倒的に道しるべなき世界だからです。

何をすればいいかわからない。だから「これをやれ」と言ってもらいたい。そして「ここからここまでやりなさい」と、クリアすべき課題を用意してもらいたい。こういう心構えは、中高時代の受験勉強に起因するものです。「やるべきこと」が外から与えられ、しかも努力すればするほど成功に近づくことができる(と感じる)──。これは〝受験型モデル〟とでも言うべき感覚で、たとえば私が恋バナを聞かせてもらうことの多い独身のアラサー女性にも顕著に見られる傾向です。マジメで努力家の独身女性ほど、自分にノルマを課すように婚活へと出向き、絶え間ない努力で女子力やコミュニケーション能力を磨きながら結婚というゴールを目指していく。その姿はまるで受験生のようです。しかし、恋愛や結婚は努力と結果が正比例してくれる世界ではないので、頑張りが空転してしまうことも多々あります。そこで彼女たちは「努力が足りない」「自分に問題がある」と自責的に考えてしまい、どんどん苦しみの回路にハマり込んでいく……。そんなシーンを、本当によく目にします。

話が大分逸れてしまいましたが、当時の私も〝受験型モデル〟に囚われていたため、放任主義の大学よりも、努力の道筋を提供してくれる新書や参考書に吸い寄せられたのだと思います。

モヤモヤできるのは大学生の特権だ!

私はこの受験型モデルを、ちょっと危険なものだと考えています。「くれぐれも気をつけて!」と言いたいくらいです。このモデルの特徴は、とにかく「わかりやすい」ことです。目標やカリキュラムを与えてくれるため、道しるべがハッキリしている。そして、自分が何を目指し、今どのあたりにいるかも確認できるため、実感や手応えが得やすい。だからつい、手を出したくなる。しかし、ここにワナがあります。それは、手段と目的が逆転していることです。

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大学1年生の歩き方

トミヤマユキコ /清田隆之(桃山商事)

「失敗しても大丈夫!」な人生の歩き方とは? 早大助教のトミヤマユキコと、恋バナ収集ユニット桃山商事の清田隆之が、仕事や恋愛、お金やコンプレックスの話まで、自身の黒歴史をさらしつつ語ります。「キラキラしたいわけじゃないけど退屈な学生生活...もっと読む

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コメント

sena_spz これは色々と考えさせられる。 6ヶ月前 replyretweetfavorite

ooyook 自分にノルマを課すように婚活へと出向き、絶え間ない努力で女子力やコミュニケーション能力を磨きながら結婚というゴールを目指していく▶アー…! 6ヶ月前 replyretweetfavorite

danseigaku 自己啓発セミナー、怪しい宗教、ネットワークビジネス、高額な情報商材などは、 6ヶ月前 replyretweetfavorite

sayusha 「大学1年生の歩き方」cakes連載公開されました。何者でもなさを充分に味わうのもクール!(も) https://t.co/atcnyBWSbP 6ヶ月前 replyretweetfavorite