スープの「国籍」は油が決める!

作る、食べる、両面において楽なスープは、忙しくて充実した食事がとれないと悩む人にぴったりの料理です。そんなスープについて、手軽でおいしい作り方のコツを、『スープ・レッスン』の有賀薫さんにご紹介いただきます。
今回はスープにおける油の使い方。スープの大きな方向性を決めるのが油の種類。油の使い方次第でさらなるおいしさを作り出すことができます。「ニラと豚ひき肉のスープ」のレシピ付き!

スープの「国籍」は油で決まる

 油は独特の色や風味を持ち、料理に大きな特徴づけをする、味の決め手となるアイテムです。
 オリーブオイルやごま油、バターなど、油脂の性質を知ってスープに合った油づかいをマスターすることで、より深いおいしさを作り出すことができます。単なるおいしさだけではなく、スープの大きな方向性を決めるのも、油です。

 たとえば、ここに切ったキャベツがあるとしましょう。このキャベツをふたつに分けて、ごま油で炒めたときと、オリーブオイルで炒めたときでは、ずいぶん風味が違います。さらに、どちらにもにんにくを加えると、もっと差がはっきりします。中華料理のようなキャベツ炒めと、洋風なキャベツ炒めになるのです。これに水を注ぐと、それぞれ中華風なスープと洋風なスープになっていきます。
 イタリア料理のオリーブオイル、タイ料理のココナッツオイル、インド料理のギー、日本料理のごま油など、油なしでは成り立たない国の料理もありますね。それほど料理の個性を決める重要な役割を持っているのです。
 料理がマンネリ化しているな……と思ったとき、てっとり早く、そして大きく雰囲気を変えられるのも、油です。スープにいつもと違った油を使ってみると、簡単に印象が変えられます。

 ただ油を加えるだけでも、コクや味わいが増すことは想像できると思いますが、さらにスープの場合には、油を使ってじっくり炒めたり煮込んだりするやり方次第で、素材の風味が油に溶け込んだ、複雑なおいしさを作りだすこともできます。

炒める、かける。油の2つの使いみち

 スープでの油の役割はさまざまですが、料理で使うタイミングでいうと、炒める・煮込むなど「加熱」のとき、そしてトッピングなど「仕上げ」のとき、この2つに分かれます。

「加熱」のとき、というのは素材を炒めたり、焼いたり、煮込んだりする仕込みの段階で油を使うということです。第2回では、野菜を油でスュエしてから煮込むとうま味が引き出されるという話をしました。焦げ付かないよう食材をじっくり炒めるには、油が必要です。その後で煮込むときも、油が入っていれば高い温度を安定的にキープできます。

 また、食材の香り成分には、油に溶け出しやすいものがあります。先に油に香りを移しておいて、その油で他の具材を調理すると、素敵な香りのスープができます。にんにくや生姜などを使うとき最初に油に入れるのは、まず油に香りを移し、その油で調理することで他の具材に風味づけをするためです。

 加熱による油の効用は、まだまだあります。スープをポコポコと弱火で煮込んでいると、鍋の中の対流で具材がぶつかって攪拌するのと同じ状態になり、「乳化」が起こる場合があります。乳化とは、油と水のように、本来混ざらないものがよく混ざり合った状態で、スープでいうとラーメンの白湯(パイタン)スープや、白濁した鶏の水炊きなどは、その代表的なものです。
 乳化によってとろっと舌ざわりも良くなりますし、いっそうコクが増します。食べたときの油っぽさも感じにくくなります。乳化が起こるには油と水をつなぎ合わせる役割を持つ「乳化剤」が必要ですが、白湯スープや水炊きの場合は、肉に含まれているゼラチン質が乳化剤として油と水をつないでいます。

 完璧な乳化状態ではなくても、油でしっかり炒めたり、その後でゆっくりと煮込むこと によって、水分や煮崩れた野菜などと油分がよく混ざりあった状態を作りましょう。ポトフや和のお吸い物など、ノンオイルで作るスープとはまた違う、口当たりまろやかでより複雑な味わいのスープとなります。
 油をしっかり使うことによって体があたたまることも忘れてはいけません。寒い季節に作ることの多いスープに、欠かせない要素のひとつです。

 さて、一方「仕上げ」のときに使う油は、文字どおり、仕上げにほんの少量ふりかけるだけで効果があります。油のもつ香りや風味をより感じさせたいときに使います。

 仕上げの油には2タイプあります。ひとつは、フレッシュなままの、油そのものの風味を利用するもの。
 もうひとつは、油に香りのある野菜やハーブ、スパイスなどを入れて風味をつけた「香味油」です。一番わかりやすいのは、餃子に使うラー油(唐辛子油)やラーメンに使われるネギ油でしょうか。さきほどもお伝えしたように香りは油に移りやすく、この性質を利用するのです。油にそのまま素材を漬けておくだけのこともありますし、素材をオイルに入れて火にかけてより高い香りを引き出し、油に移すこともあります。
 ハーブオイルやスパイスオイルを作ってスープにかけると、ハーブやスパイスの華やかな香りと油のコクが合わさって魅惑的なスープになります。あらかじめ風味づけしたオイルを作っておけば、手軽にスープに風味をつけられます。


ネギと生姜の香りをごま油に移した、ネギ油。ラーメンのトッピングなどに使うと風味がアップする

あると便利なオリーブオイルとごま油

 家でスープを作るときにはオリーブオイルとごま油を常備しておくと、ぐんと味の幅が広がります。
 オリーブオイルはイタリアンのイメージですが、洋風の料理全般に使えます。エクスト ラバージンオリーブオイルと普通のオリーブオイルがあります。どちらか1本なら、生でそのまま使っても風味の良いエクストラバージンオリーブオイルを選ぶといいと思います。
 ごま油は中華料理にほぼ万能に使えます。実は中国では必ずしもごま油を多用するわけでもないのですが、家庭における「中華料理らしさ」に、ごま油は欠かせません。ごま油には黒と白があります。1本買うなら、ごま油らしい風味のある黒です。
 バターもリッチな風味で多くの洋風のスープに使える便利な油です。ただ劣化が早いので、たまにしか使わない場合は使うときに買うか、しっかりラップをかけて匂いが移らないようにして、冷凍庫にしまっておきましょう。ふだんからパン食などで常備している人は冷蔵庫で構いません。

 今回は、ごま油をトッピング使いする「ニラと豚ひき肉のスープ」を作ります。スープはノンオイルで作っておいて、最後に油をかけて仕上げましょう。ほんのひとたらし加えるだけで、油の香りが華やかに立ち、あっさりしたスープにコクをつけてくれます。

 これとまったく同じ作り方で、ごま油をオリーブオイルに変えて、ニラをピーマンに、生姜をにんにくにしてみると、がらりとスープが変わります。(その場合は、ピーマンはニラより少し長めに煮ます)

<今回のまとめ>
●油の種類でスープの雰囲気が決まる
●油は「加熱時に使う」と「かける」、2つの使いみちがある
●スープに使うなら、ごま油とオリーブオイルがあると便利


ニラと豚ひき肉のスープ

材料(2人分) 所要時間約15分

ニラ   1束
ひき肉  80〜100g
生姜   1かけ(10〜15g)
赤唐辛子 1/2本(粉末でもOK)
塩    小さじ1
片栗粉  大さじ1
ごま油  少々
水    500mℓ

作り方

1.ひき肉を湯通しする
鍋に水1カップ(記載外)とひき肉を入れ、箸でほぐしながら強火で温める。沸騰しはじめ、肉が白っぽくなったらザルに上げてお湯を切る。生姜をみじん切りにする。


2.肉と生姜を煮て、ニラを切る
ひき肉を鍋に戻し、生姜、水500ml、塩小さじ1を加えて火にかける。まず強火、煮立ったら弱火にして約7〜8分煮る。途中、種を取って輪切りにした赤唐辛子も加える。煮ている間にニラを7〜8mm幅に切る。


3.
ニラを入れ、ごま油で香りづけする
片栗粉を大さじ1の水(記載外)で溶く。鍋の火を強め、片栗粉を少しずつ加えてとろみをつける。ニラを一度に投入してひと混ぜし、15〜20秒ほどで火を止める。仕上げにごま油をたらす。


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この連載について

初回を読む
忙しい現代人のための 手軽でおいしいスープ入門

有賀薫

「帰宅が遅く、十分な自炊ができない」「自炊したいけど、忙しくて外食ばかり」といった悩みをもつ方は多いのではないでしょうか。そんな人も効率よくお腹と栄養を満たせるのが、作るのが簡単で夜遅くに食べても体への負担が少ないスープです。cake...もっと読む

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コメント

himeya915 そーいや胡麻油とオリーブ油、どっちも常備してるわ…(笑) 4日前 replyretweetfavorite

yucca88 私も日頃からオリーブオイルとごま油には散々お世話になっています🙏 4日前 replyretweetfavorite

kaorun6 今回、油使いの例として入っているニラとひき肉の 5日前 replyretweetfavorite

trevo4ubr 我が母は同じ論理で、ドレッシングを自分で作る。 5日前 replyretweetfavorite