高畑との白昼デートはまだ続いていた。
たくさんの木々に囲まれ秋の薫風が二人の間を駆け抜けていった。騒がしかった夏が終わり、風は少しひんやりとしていた。
ユウカは池崎のことを忘れていたわけじゃないけれど、今この時間、高畑と一緒に歩いていることに、違和感をあまり覚えなかった。ユウカが高畑に過去の自分の失態を洗いざらい話しても高畑のユウカに対する態度は変わらなかった。
ユウカの憧れの結婚式場から駅までの帰り道、高畑はさりげなくユウカの指に触れ絡ませた。ユウカもそれを自然と受け入れた。やがて駅に着くと高畑はユウカに言った。
「ユウカさん、他に行きたいところないの? 今日は1日オフだから」
「高畑さん、明日は仕事だよね? 今日の新幹線で戻るの?」
「うん。明日の朝でも構わないよ。でもユウカさんは今日家に帰るよね?」
「……うん」
高畑は今日ユウカに会って、本当はもっとユウカとの関係を進めたかったのかもしれない。でも、今はそのタイミングじゃないとわかって身を引いてくれてるんだろう。そんな彼の気持ちが熱のこもった手から伝わってきた。
「でも、まだ時間はあるよ。高畑さんこそ、行きたいところある?」
「せっかく横浜だし、中華街行こうか?」
「中華街? いいよ、こっから近いから」
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