おいしいスープの方程式 〜白菜と鶏ひき肉、生姜のスープ〜

鍋ひとつ皿一枚で作って食べられる、簡単で失敗しにくく作り置きがきく、朝や夜遅くに食べても体に負担がかかりにくい……作る、食べる、両面において楽なスープは、忙しくて充実した食事がとれないと悩む人にぴったりの料理です。
そんなスープについて、手軽でおいしい作り方のコツを、『スープ・レッスン』の著者・有賀薫さんにご紹介いただきました。全8回にわたってお届けしていきます。

いまなぜスープなのか

 食糧の心配がないはずの現代でも、日々の食事は大きな悩みです。少人数世帯が増え男も女も忙しく、ちゃんとした料理は難しい。でも外食やコンビニ食ばかりでは満足度が低いし、健康面も気になります。効率よくお腹と栄養を満たし、かつおいしく食べるにはどうしたらいいか。その答えが、長いあいだ庶民の食を支えてきた「スープ」です。

 簡単で失敗しにくい、作り置きがきいて無駄がない、朝や夜遅くに食べても体に負担がかかりにくい……スープの最大の特長は、作る、食べる、両面において、楽であるということです。コトコト煮込んで時間をかけ、だしをしっかりとるイメージが根強いですが、食材の特性をうまく生かせば、短時間でも十分においしいスープは作れます。

 この連載では、身近な野菜や肉、魚介を使ったスープを作るためのメソッドをお伝えします。食生活をなんとか改善したいと思っている人も、具だくさんの「食べる」スープなら、きっと毎日の食がより充実したものになるはずです。


ありあわせの肉と野菜があれば、スープはすぐにできる

「スープは時間がかかるもの」という思い込み

 毎日の食事にスープをとりいれましょう、と話すと、多くの人が「だってスープって作るのが大変ですよね。何時間も煮込まなくてはいけないじゃないですか」と言います。

 でも、実はスープはみんなが考えているよりずっと簡単にできるものです。西洋では肉や野菜をとことん煮込むことも多いですが、味噌汁に馴染んだ日本人には、シャキッと煮た野菜をおいしいと思う感性が備わっています。ミネストローネやクラムチャウダーなど長時間煮込むイメージのあるスープでも実は30分もあればできてしまうものがほとんどで、何時間もかけて煮込まなくてはならないスープは珍しいぐらいです。

 焼きもの、炒め物、揚げものなどに比べて後片付けがラクなのもスープの特長です。鍋ひとつ、皿一枚で作って食べられるスープにパンやごはんを添えれば、ごく簡単に、それでいて充実した食卓を整えることができるのです。

 スープは世界中に存在していてバリエーションも無限にありますが、それらをひとつずつレシピとして覚える必要はありません。レシピのように固定化するよりも基本の構造を覚えておいて、そこにスーパーで安く手に入れた食材や、冷蔵庫の残り物を当てはめていく方が楽です。まずは、おいしいスープの基本について説明します。

おいしいスープの方程式

 肉や野菜を鍋に入れ、水を注いで煮ると、とても原始的なスープができます。
 そこに塩を加えれば、ぐんと料理らしくなりますし、さらに食材をあらかじめ炒めたり、 だしや乳製品などのうま味やコク、スパイスなどの香りを重ねたりすることで、オリジナリティのあるスープがいくつでも作れます。

 おいしいスープの方程式は、以下の4つの要素の掛け算になります。

 具材×だし×オイル×調味料=スープのおいしさ

 ノンオイルのスープもあるなど、すべてがこれにあてはまるとは限りませんが、スープの要素をこのように分解しておくと、作るときに応用がきくようになります。

 中でも「だし」は、知っているようで意外と複雑なので、説明をしますね。
 だしとは、肉や野菜などの食材を煮出したり、水に漬けて味や香りを抽出したものです。国によって、ブイヨン、フォン、ブロード、スープストックなど、さまざまな呼び方がありますが、ここでは和洋問わずに、「だし」と呼ぶことにしましょう。

 だしと具材を別々に用意し、だしで具材を煮るととてもおいしくなります。ただ、これは本来、レストランのやりかたです。最近のレシピでは家庭料理でもだしを使いますが、家で作るスープの場合は歴史からいっても、だしと具材が兼用になっているものが圧倒的に多く、そのほうが効率がよいと思います。
 私のレシピも、料理を簡素にするために、具材をだしではなく水で煮込むものがほとんどです。だしは、うま味があまり出ない具材のときや、より強い味を出したいときに狙いを定めて使います。

 具材、だし、オイル、調味料の4つの中でまず考えたいのは、だしとなり、具となるための食材です。
 よりおいしくするには、肉や魚介×野菜という「動物性」のうま味と、「植物性」のうま味の組み合わせがおすすめです。
 これは、科学的にも証明されています。

 すこし専門的な話になりますが、野菜に多く含まれるアミノ酸系の[グルタミン酸]と、 肉や魚介に多く含まれる核酸系の[イノシン酸]をかけ合わせたとき、「うま味の相乗効果」 が起こり、おいしさが飛躍的に高まるということが発見されています。和食を代表する昆布とかつおのだしは、昆布のグルタミン酸とかつお節のイノシン酸が組み合わされた、理想の組み合わせです。
 もちろん味だけでなく、栄養の上でも肉や魚と野菜を同時にとることはおすすめです。


肉と野菜、組み合わせればどちらもおいしく食べられる

 おいしいスープ作りには、さまざまなコツがあります。ミネストローネや豚汁のように 複合的なおいしさを味わうために、たくさんの種類の野菜を入れることや、旬の野菜をとことん楽しむために、単品をたっぷりと使うことなどもその例です。ノンオイルでも発酵食品のうま味が抜群の味噌汁、塩なしでも酒や油のコクや風味でおいしく食べさせる薬膳スープ、おいしさを作りだす何かしらの素材や方法が、世界中のスープに隠されています。共通するのは「食材の味や香りが水に抽出されておいしくなっている」という状態で、それを作りだせれば、スープは成功なのです。

 この「スープ入門」では、これだけはおさえておきたいという、おいしさのコツを章ごとにひとつずつお伝えしていきたいと思います。コツをつかんでしまえば、レシピなど見なくても、自分で自在にスープが作れるからです。

 今回はまず、方程式にのっとった「肉と野菜を組み合わせたスープ」を作ってみましょう。白菜とひき肉、たっぷりの生姜を使った、とても簡単にできるおかずスープです。

<今回のまとめ>
スープは必ずしも時間がかかる料理とは限らない
●だし×具材×オイル×調味料=おいしいスープ
●家庭では、だしと具材は別々に用意しなくてよい


白菜と鶏ひき肉、 生姜のスープ

材料(2人分) 所要時間約15分

白菜 1/4株(約500g)
生姜 約50〜60g
鶏ももひき肉 100g 
塩 小さじ1
サラダオイル 大さじ2
水 約600mℓ

作り方

1.白菜を切り、生姜をすりおろす
白菜は長さ5cm、幅2cmぐらいに切り、白い茎と葉をおおまかに分けておく。生姜をすりおろす。鶏ひき肉、すりおろし生姜、塩小さじ1、水200mℓをよく混ぜ合わせる。

2.白菜を煮て、ひき肉と生姜を加える
白菜の茎を鍋に入れ、続いて葉をのせ、200mℓの水とサラダオイル大さじ2をまわしかけてふたをし、中火にかける。煮はじめて5分ほどたったらふたを開け、1のひき肉を均一になるようにかける。

3.煮込む
さらに水2〜300mℓを加えて、ひたひたにし、ひき肉に火が通り白菜がやわらかくなるまで8~10分煮込む。好みで生姜の千切りを加える。

※こちらのレシピは『スープ・レッスン』でも詳しく紹介しています。


連載予定 (※毎週木曜更新。括弧内は公開予定日です)

第1回 肉と野菜で一皿完結 〜白菜と鶏ひき肉、生姜のスープ〜
第2回 “だし”がなくても、おいしいスープは作れる 〜キャベツとたまねぎ、トマトのスープ〜(7/5)
第3回 油で味のシフトチェンジ 〜ニラと豚ひき肉のスープ〜 (7/12)
第4回 焦げがうまみに変わるとき 〜焼きネギと鶏肉のスープ〜 (7/19)
第5回 塩を使いこなすとスープが変わる 〜青菜のスープ〜 (7/26)
第6回 時間のない人ほど塩漬け肉を常備せよ 〜塩豚のポトフ〜 (8/2)
第7回 味噌汁万能! 〜シンプル豚汁〜 (8/9)
第8回 スープの秘密兵器、乳製品 〜あさりのクラムチャウダー〜(8/16)



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この連載について

忙しい現代人のための 手軽でおいしいスープ入門

有賀薫

「帰宅が遅く、十分な自炊ができない」「自炊したいけど、忙しくて外食ばかり」といった悩みをもつ方は多いのではないでしょうか。そんな人も効率よくお腹と栄養を満たせるのが、作るのが簡単で夜遅くに食べても体への負担が少ないスープです。cake...もっと読む

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コメント

aa_k0827 このスープ美味しかったなhttps://t.co/0AKKfTm71T 20日前 replyretweetfavorite

rengejibu 今朝作ってみました。子どもにも好評。美味しいスープがあると、朝食が進んで登校がスムーズです!⇒ 23日前 replyretweetfavorite

makimakitchen 肌寒い季節にサッと作れて温まるスープ。 白菜も美味しくなって来たしまた作ろう。 27日前 replyretweetfavorite

izaken77 有賀さんのスープ入門にも書かれている、「旨味の相乗効果」ですね。 https://t.co/VeEZKf1zUI https://t.co/LRzMe3nfpI 11ヶ月前 replyretweetfavorite