高畑には結婚してた過去があった。
そして、浮気をされて離婚して残されたのは息子1人だった。
その彼はいま、高校生になってるという。
この事実をどう捉えるのがいいんだろう?
ユウカの感情のベクトルは不思議なくらいプラスにもマイナスにも向かなかった。
「あ、髪切ったの? 似合ってるね」
そんな調子でさらりと話されたからだろうか。
珈琲カップを手に取っていた高畑はカップに口をつけたが「あ、」とカップをおいた。もう中には何も入っていないようだ。平然に見える高畑も少しはこの告白に動揺しているのだろうか。
「高畑さん、今日は予定ないんだよね? 近くに公園あるから少し歩かない?」
蝉の声も聞こえなくなった秋口、季節の変わり目を感じながら公園でのんびり高畑と話すのもいいんじゃないか、と思った。
「いいね。じゃあ行こうか」
伝票を持ち立ち上がる高畑の背中をユウカは追った。公園までの道のりは他愛もない会話をした。
「ユウカさんってずっとロングヘアーなの?」
「うーん、そうかな。中学生のときはソフト部でショートにしてたけど」
「へ〜想像つかないな、なんか」
「これでも結構評判よかったんだよ。ほら、私顔小さいからそれがより際立つって」
「いうねぇ」
「だってほんとのことだもん」
こんな中学生みたいな会話がいちいちユウカの気持ちを高揚させた。公園に着くと、トイプードルを散歩させてるマダムやランニングをしているベンチャー企業の社長(ユウカの勝手な決めつけ)や日向ぼっこをしている老夫婦が思い思いのことをしていた。
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