真壁ケンジ役・加藤将之氏
【前編】“いい声”のつくり方

どこまでもまっすぐで真面目。まさに「いいヤツ、いいオトコ」の代表とでもいうべきなのが、真壁ケンジというキャラクター。アニメでのケンジもそのキャラクター同様、まっすぐでいい声をしている。演じている加藤将之さんに、その声のつくり方についてお話を伺った。

—アニメでのケンジの声は、作り込んだものなのでしょうか。

真壁ケンジという人物を僕なりに解釈していったら、ああいう音になったということですね。今回は、より客観的になってイメージを作り上げたつもりです。というのも、あまりに自分とかけ離れている役だから、素直に感情移入していくわけにもいかなかった。ふつうにしていたら、うまくこの人物を捉えられない。そこで、できるだけ第三者的な位置からケンジという人物を俯瞰で眺めて、ようやく全体像を描けたという感じです。

 

 最初にケンジの役が決まったと教えていただいたときは、まったく実感が湧きませんでしたよ。「ケンジ役です」と言われて、「え、どのケンジですか」って聞き返してしまったくらい。『宇宙兄弟』に他のケンジはいませんよね(笑)。もちろん「あんな役ができたらいいな」という存在ではあったけれど、同時に「これはオレじゃないよな……」という気持ちでした。だってケンジは、さわやかでイケメンで、いわゆる「いいヤツ」で、どこから見てもまっとうな人間。これじゃあ、自分に似ているところがあるとはとても思えないのもしかたないでしょう(笑)。

 でも、そこで白旗を上げるわけにもいかない。じゃあ、まっとうな人間ってどんなふうだろうと突き詰めて考えてみました。友でありライバルである六太は、とくにモノローグ場面なんかで「んんなんだよぉう!(なんだよ!)」とか、崩した言葉をけっこう使いますよね。声にならないような呻きを上げたりもする。ケンジは、そういう音は出さないかなと。いつだってきちんとした音で、意味のあることを言う。うやむやなところのない話し方を貫く、そうしていけばケンジの人間像全体まで築けるんじゃないかと思いました。それで、いま番組で聴いていただいているケンジが出来上がってきたというわけです。

—たしかに筋の通ったケンジの声は、作品の中でも際立っていますね。どこまでも自由な感じの六太とは好対照です。まっとうな人間が発する「いい声」を出せるというのは、声優としては難しいことなのですか。それともそれは〝基本〟のことなのか……。

しっかりした声を出せる、それはたしかに声優としてぜひ押さえておきたいポイント。僕としてもそこは大切にしているつもりです。声優には表現力や演技力があってのものですが、まずはプロとしての声を出せることが大切だと思ってました。僕は声優の養成学校に通っていましたが、そのころから「声優とは声だろう、いい声を出せるようにならねば」という気持ちがなぜか強かった。「いい声」とはどんなものかという問いに、答えはまだ見つけられていないけれど、少なくともちゃんとした音を出せるようにとボイストレーニングはずっとしてきました。

最初は先生について教わりました。腹式呼吸とはどんなものかすら分からなかったので、まさにイチから身につけていきました。いまの自分の声をつくるのに7年近くかかりました。いや、少しならすぐに出せるようになるんですよ、ワンフレーズくらいなら。それを持続させること、そしていつでも自在に使えることがたいへんなんです。今でも身体の調子が悪いと出せない時があります。

僕が教わった腹式呼吸のやり方は、股関節の筋肉を使って横隔膜をコントロールするというものなんですが、そのあたりをうまく操れるようになるには、肉体改造をするくらいの覚悟でやらないといけませんでした。声は声優にとって最大の武器。そう思って、いつでも研いでおかなければという意識でやっています。何しろ僕は声優のキャリアを歩みはじめるのが遅かった、それでいっそう自分なりの「武器」を持たねばといったことを考えてきたのかもしれません。

—前歴・前職があるのですね。声優を目指し、実際に仕事を始めるようになった経緯は?

そもそも高校に上がるくらいまでは、声優という職業があることすら知らなかった。アニメや映画は好きだったけど。子どものころから見ていたから、声が付いているのは当たり前だと思っていました。高校三年のとき、映画『アンタッチャブル』のリメイク版をテレビで観ていて、あれ、不思議だなと。ショーン・コネリーとケビン・コスナーが話し合っている場面なのに、声は日本語だぞと(笑)。口の動きとぴったり合っているように見えるし。そこで初めて、声優という仕事があることを知り、すごいな、おもしろいなと興味を持つようになりました。

でも、それでいきなり声優を目指したわけじゃなく、普通に進学して、普通に働いていました。ホームセンターに勤務していたんです。趣味でマラソンをやっていたのですが、日々練習をしていると、やっぱり大会に出たくなります。でも、そういうのはたいてい週末の開催です。接客業では土日に休むことなんてできっこない。このままだと、やりたいことをやれずに終わってしまうんじゃないか。そう思って会社を辞めようと決意しました。

辞めたのを機に、いちど大きな大会に出ようと考えました。アフリカのサハラマラソンです。一週間くらいかけて砂漠を走るというものです。最初に張り切りすぎて、途中、かなり疲弊しました。意識が朦朧として、幻覚まで見てしまいました。砂漠のど真ん中をトボトボ歩きながら、帰ったら自分のやりたいことをやろう、とここでもまた決意を。それで、ようやく声優への道を歩き出したというわけです。なかなか壮大でしょう(笑)。

—そういえばケンジも、もとは化学研究所に勤める研究員で、進路を変更して自分の夢を追いました。同じような生き方をしているといえそうですね。

そう、転職組だというところは共通点です。比べたら怒られるでしょうが、彼がどれだけ強い気持ちで宇宙に臨んでいるか、そのあたりだけは、少し実感として理解できる気もしますね。

(後編へ続く)

 

取材・文/山内宏泰

 

加藤 将之(かとう・まさゆき)

声優。東京都出身。東京都出身。主な出演作に『デッドマン・ワンダーランド』千地清正役、『SDガンダム三國伝』張飛ガンダム役、『24 ファイナルシーズン』ファラド役(吹替え)などがある。

個人ブログ→http://ameblo.jp/actkatokichi-1972/

 

 

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