Tinderでマッチした塩顔男子が中学の同級生だった

東京に疲れて、地元に帰ってきた橘美由紀(28)。美由紀と同級生で、家業を手伝っている田中達也(28)。Tinderでマッチした二人は、10年以上ぶりに再会するが――
LINEで、SNSで、出会い系アプリで。いま恋のリアルは、スマホの向こう側に広がっています。かつてなく加速してからまりつづける男女の運命は、どこに向かうのでしょうか。

#橘美由紀  #28歳 #無職 #目を閉じても歩ける町の狭さ

 地元のショッピングモールを歩いていると、時々、懐かしい顔を見かける。
 でも、向こうは大抵子供連れだから、たとえ気づいてもなんとなく目を逸らしてしまう。

 東京から戻ってきても、出かける場所といえば今もこんなところしかない。

 中学のときにできたモールは、この町で一番オシャレな場所だった。
 両親と買い物するのも、友達と遊ぶのも、デートをするのもここだった。

 地元で結婚した友達は今も変わらない生活を送っていて、私はそれが嫌でここを離れたのに、結局戻ることになってしまった。
 東京の人ごみに疲れたせいか、この広くてなにもない場所ですら、心なしか居心地のよさを感じてしまう。

 平日の空いたフードコートで、たこ焼きを頬張りながらスマホを見ていると、Tinderの通知がきている。
 こんな田舎でもやっている人いるんだ。新規のいいね!が通知されていた。

 適当にスワイプすると、すぐにマッチングした。
 名前は、イニシャルだけのT.T。同じ歳だ。
 短髪で目が細く、体つきは男性らしくしっかりして、そこそこのイケメンだった。

 右スワイプしてLIKEを送ったらうまいことマッチングして、五分と待たずメッセージが送られてきた。

「はじめまして。東京在住って書いてるけど、今は帰省中なの?」

 たこ焼きを食べる手を止めて、すかさず打ち返す。

「いえ、最近こっちに戻ってきたんです」

「そうなんだ。成人式の会場だった遊園地、去年の夏に閉園したのは知ってる?」

「え、ほんとに?」

 私たちのときはちょうど数人が壇上にあがる乱闘騒ぎが起きて、ニュースにもなったから記憶に残っている。実家に帰るまで何通かやり取りをする中で、その現場をどうやら私と彼は、さほど離れていない場所から見ていたことがわかった。

 その遊園地は、私たちが生まれた頃にできたテーマパークだった。
 子供の頃、両親に連れて行ってもらったのはもちろん、学校の遠足でも何度か行ったことがある。あのときはいくら遊んでも時間が足りないほど広く思えたのに、時間と共に施設は古びて、成人式の後は帰省しても寄りつかなくなった。

 もしかしたら、この人とどこかですれ違ったことくらいあるかもしれない。
 そう思っていると、向こうから話を切り出された。

「よかったらさ、LINEしない?」

「いいよ」

 どうせ暇を持てあましているのだから、私もオーケーした。
 でも、LINE IDを入力してアイコンの表示名を見て死ぬほど驚いた。

「田中なの?」

「そうだよ。美由紀、全然気づかなかったでしょ(笑)」

 田中達也は、中学の同級生だった。
 学年で一番背が低く、ちょっと大人しい男の子だ。

 当時は多分、話したことなんてない気がする。

#田中達也  #28歳 #自営業 #初恋の女の子との再会
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#ワン・モア・ライク! #ワン・モア・チャンス? #マッチングアプリで恋をして

大塚美和

LINEで、SNSで、出会い系アプリで。いま恋のリアルは、スマホの向こう側に広がっています。かつてなく加速してからまりつづける男女の運命は、どこに向かうのでしょうか。

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コメント

sy7kg_loveaibou #スマートニュース 9ヶ月前 replyretweetfavorite

miwa_otsuka 約1ヶ月ぶりの更新になりましたが、あたらしい小説を書きました〜〜みなさまぜひよんでね。https://t.co/TTMIio1nES 9ヶ月前 replyretweetfavorite

peanutsoftman あれ、楽しいぞこれ 9ヶ月前 replyretweetfavorite