愛はなくてもお金はほしい。離婚しない妻たちの本音。

夫への恨みつらみが書き込まれた「だんなDEATH NOTE」というサイトが、以前話題になりました(現在は閉鎖)。そんなにイヤなら離婚すればいいのでは、と誰でも思うでしょう。でも、それでは食べていけないので、死んでもらって、年金と生命保険とマイホームを手に入れることが彼女たちの願いなのです……。話題の『専業主婦は2億円損をする』から特別連載。日経ウーマンオンラインでインタビューも!

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専業主婦は2億円損をする』(マガジンハウス)


母子家庭でも生き抜くには

「だんなDEATH NOTE」というインターネットのサイトがあります。「夫に今すぐ死んでほしい」と毎日思っている妻が、日頃の恨みつらみを自由に投稿し、だれでも読めるようになっていて、その内容が話題になりました。

 記事のタイトルを見るだけでも、「今日中に死んでください」「怪我バンザイ。そのまま死ね」「顔面をハンマーでブチ殴りたい」などと強烈な言葉が並んでいます。「死ねば許されると思ったら大まちがいです」などというのもあって、夫はただ死ぬだけではダメなようです。

 Googleでは、検索用語を入力すると、自動的に候補が表示されるようになっています。みんなの知りたいことは重なっているので、「渋谷」と入力すると、「ランチ」「映画館」などの候補が出てきて、入力の手間をはぶいてくれるのです。

 7、8年前から、この検索ボックスに「夫」と入力すると、「死んでほしい」という言葉が真っ先に出てくることが話題になりました。最初に聞いたときはなにかの都市伝説だと思ったのですが、自分でやってみてもたしかにそのとおりです。これは、たくさんの女性(妻)が、インターネットで「夫 死んでほしい」と検索しているということです。

 なぜこんなことになるのでしょう。それは、ほかの検索候補に「夫 死亡 保険」「夫 死亡 手続き」などが並んでいることから推測できます。彼女たちは、夫が死んで保険金を受け取ることを願っているのです。

愛がなくてもお金はほしい

 夫が生命保険に加入していれば、死亡によって保険金が支払われます。生命保険金の平均額は2000万円程度です。

 しかし、妻にとって夫が死ぬことのメリットはこれだけではありません。


 まず、夫がサラリーマンで18歳以下の子どもがいる場合、遺族基礎年金と遺族厚生年金が支給されます。子どもが2人いる場合は基礎年金で年120万円、厚生年金を加えれば年200万円ちかくになります。

 それに加えて、住宅ローンを借りてマイホームを購入していた場合、自動的に団体信用保険に加入することになるので、夫が死亡してローンの返済ができなくなったときは、保険会社が代わりにローン残高を全額払ってくれます。

 これをかんたんにいうと、夫が死ぬことによって①住宅ローンのないマイホームが自分のものになる、②子ども2人なら年200万円の年金が受け取れる、③平均して2000万円程度の生命保険金が下りる、ということになります。

 いまはこういうことがインターネットでかんたんに調べられるので、それを知ったたくさんの妻が、夫が死んで、自分と子ども(たち)だけで暮らしていくことを願うようになったのです。

 もちろん、生命保険金を受け取ったとしても、年200万円(月額約16万7000円)の遺族年金で暮らしていくことはできませんから、母親はパートや非正規ではたらくことになるでしょう。しかしそれでも、彼女たちは、夫といっしょに暮らすよりずっとマシだと思っているのです。

「だんなDEATH NOTE」を見れば、独身の女性は結婚に躊躇するでしょう。気の弱い独身の男性は、ホラー映画のように脅えるかもしれません(身に覚えのある夫にとっては笑い事ではないでしょう)。こうしてますますみんなが結婚しなくなるのではないかと不安になりますが、この異様なサイトが、日本における「結婚」のひとつの現実だということは認めざるををえません。

「だんなDEATH NOTE」に投稿しているのは、文面から、ほとんどが小さな子どものいる女性です。それ以外のひとは、男も女も、彼女たちにまったく共感できないのではないでしょうか。「そんなにイヤなら、なんでいっしょに暮らしてるの」「さっさと別れればいいのに」と思うからです。

 しかしこれは、うつ病で苦しむサラリーマンに向かって、「会社を辞めれば治りますよ」というのと同じです。そんなことは本人もわかっているのですが、辞めると生活できなくなるので、必死に耐えているうちにうつ病になってしまうのです。

 夫が死ぬことを願うのは、専業主婦だけではありません。子どもをもってはたらいている女性も、その多くは非正規で低収入ですから、夫の給料がないと子どもとの生活が維持できません。そこで、どんなに嫌いな夫でも、ひたすら耐えてセックスにもつき合わなくてはならないのです。

 なぜこれほどまで「妻」の立場にしがみつこうとするのでしょうか。それは日本では、母子家庭になるとたちまち社会の最底辺に落ちてしまうからです。

この連載について

初回を読む
専業主婦は2億円損をする

橘玲

マスコミから取材殺到、大反響! 新しい働き方と生き方を提案する、話題の書から特別連載。「仕事疲れた、専業主婦になりたい」。そう思っているあなた、ちょっと待って。会社は辞めても、仕事をやめてはいけません。妻が専業主婦というあなた、このま...もっと読む

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コメント

ChromeYellow0 別の言い方をすれば、「マイホーム無、生命保険無、貯金無。でも収入はある」状態が妻から死を願われない条件ということか。 4日前 replyretweetfavorite

nakapyo 『なぜこれほどまで「妻」の立場に しがみつこうとするのでしょうか。 それは日本では、母子家庭になると たちまち社会の最底辺に 落ちてしまうからです。』 https://t.co/n5RVYGC2WM 6日前 replyretweetfavorite

ak_tch 「 cakes連載。「だんなDEATH NOTE」の話です。 6日前 replyretweetfavorite