小野雅裕
エウロパ生命探査
「私」はどこからきたのか?1969年7月20日。人類がはじめて月面を歩いてから50年。宇宙の謎はどこまで解き明かされたのでしょうか。本書は、NASAの中核研究機関・JPLジェット推進研究所で火星探査ロボット開発をリードしている著者による、宇宙探査の最前線。「悪魔」に魂を売った天才技術者。アポロ計画を陰から支えた無名の女性プログラマー。太陽系探査の驚くべき発見。そして、永遠の問い「我々はどこからきたのか」への答え──。宇宙開発最前線で活躍する著者だからこそ書けたイメジネーションあふれる渾身の書き下ろし!人気コミック『宇宙兄弟』の公式HPで連載をもち、監修協力を務め、NASAジェット推進研究所で技術開発に従事する研究者 小野雅裕がひも解く、宇宙への旅。 小野雅裕の書籍『宇宙に命はあるのか ─ 人類が旅した一千億分の八 ─』を特別公開します。
火星の次にNASAが目指すのは、氷の下に海を隠す世界・エウロパだ。現在、二〇二二年頃の打ち上げを目指して「エウロパ・クリッパー」というミッションの準備が進んでいる。「クリッパー」とは十九世紀に世界の大洋を航海した快速帆船のことだ。エウロパ・クリッパーは木星を回る軌道に乗り、四十五回、エウロパをフライバイして観測する。
エウロパ・クリッパーには氷透過レーダーが搭載される。これにより、エウロパの海を覆う氷の殻の構造がわかり、また氷の中に隠れた液体の水の「ポケット」を見つけることができる。もしエンケラドスのように氷の割れ目から水蒸気が吹き出ていれば、その中を飛びながら質量分析器を使うことで海水の成分を分析することができる。

エウロパ・クリッパーの想像図(Credit: NASAJPL-Caltech)
エウロパ・クリッパーに続くのが、エウロパ・ランダーだ。その名の通り、エウロパに着陸するミッションである。まだ構想段階だが、もし承認されれば二〇二四年頃に打ち上げられる計画だ。目的はずばり、生命の発見である。
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この連載について
小野雅裕
銀河系には約1000億個もの惑星が存在すると言われています。そのうち人類が歩いた惑星は地球のただひとつ。無人探査機が近くを通り過ぎただけのものを含めても、8個しかありません。人類の宇宙への旅は、まだ始まったばかりなのです…。 NASA...もっと読む
著者プロフィール
NASA の中核研究機関であるJPL(Jet Propulsion Laboratory=ジェット推進研究所)で、火星探査ロボットの開発をリードしている気鋭の日本人。1982 年大阪生まれ、東京育ち。2005 年東京大学工学部航空宇宙工学科を卒業し、同年9 月よりマサチューセッツ工科大学(MIT) に留学。2012 年に同航空宇宙工学科博士課程および技術政策プログラム修士課程修了。2012 年4 月より2013 年3 月まで、慶応義塾大学理工学部の助教として、学生を指導する傍ら、航空宇宙とスマートグリッドの制御を研究。2013 年5 月よりアメリカ航空宇宙局 (NASA) ジェット推進研究所(Jet Propulsion Laboratory)で勤務。2016年よりミーちゃんのパパ。主な著書は、『宇宙を目指して海を渡る』(東洋経済新報社)。現在は2020 年打ち上げ予定のNASA 火星探査計画『マーズ2020 ローバー』の自動運転ソフトウェアの開発に携わる他、将来の探査機の自律化に向けた様々な研究を行なっている。阪神ファン。好物はたくあん。