第8回】日本のセットプレーは悪くなかった! 日本×ブルガリア

今日のテーマは、30日に行われた日本×ブルガリアの国際親善試合です。結果は0-2、日本の課題とされるセットプレーからの失点で敗れてしまいました。この試合、本当にセットプレーが問題だったのでしょうか? セットプレー戦術本の編著者でもある清水さんによると「日本のセットプレーは悪くない、それよりも危険視すべきことがある!」とのこと。本当の問題点とは…!? 記事の内容や、サッカーの観方についての質問はこちらまで。

ブレ球の処理は的確だったのか?

まさかの『超・スペシャル・ブレ球』!! ……。まさか前半3分にあんな失点を喫するとは、まったく予想していなかった。

ボールを蹴った2番マノレフの助走、ボールへのアプローチ角度を見たとき、「アレッ」と思った。

遠藤保仁の蹴り方を見ればわかるが、普通にカーブボールを蹴るときは、ボールに対して斜め方向、あるいは横方向から角度を付けて助走し、蹴る。そのほうがボールをこすり上げやすいからだ。

しかし、マノレフは正面に近い位置から、真っすぐ助走に入った。明らかにカーブボールを蹴る助走の角度ではなさそうだ。「ん? まさか…」という気持ち悪さを感じた次の瞬間、見事なブレ球を沈められてしまった。

インパクトは足の側面、インサイドだ。インステップでブレ球を蹴るときほどの威力は出ないが、インサイドのほうがフォロースルーを止めてボールの無回転状態を作りやすいため、高確率でブレ球が出るらしい。「らしい」というのは、蹴ることができる元Jリーガーや大学サッカーの選手からそう聞いたからだ。僕自身は蹴れないので実感としてわからないが、どうもそういうことらしい。

そして、川島永嗣がパンチングをミスしたリプレイ映像を見たとき、僕の頭の中には南アフリカワールドカップ、オランダ戦のスナイデルのゴールがフラッシュバックした。あのときも川島はスナイデルのシュートが「手元で変化した」と後に語り、セーブに失敗している。

ブレ球はGK泣かせだ。川島は手を突き出してパンチングにいこうとしているが、これは無茶だ。野球のナックルボールを捕球するようなものなのだから、クリーンヒットは至難の業。手は構えたまま突き出さず、体のどこかに当てて『前に』落とすことに集中しなければならない。大きく弾けないので、セカンドボールを押し込まれるリスクはあるが、やむを得ない。それは味方に任せるしかない。

川島は後半にも、手前でバウンドした難しいミドルシュートの処理を、失敗とまでは言えないが、捕球し切れず、あまり質の良くないセーブをしてしまった。ミドルシュート対策は今後の川島の必須強化ポイントではないだろうか。

日本のセットプレーは悪くない!
ブルガリアの巧みなセットプレー戦術

そして、奇しくも2点目もセットプレー、FKから長谷部誠のオウンゴールで失点を喫したため、
『日本、またしても課題のセットプレーで敗戦!!』
といったネガティブな見出し、選手からもネガティブなコメントが飛んだ。

しかし、僕自身はそれほど気にすることはないと思っている。カナダ戦、ヨルダン戦のCKの失点と、今回のFKの2失点は明らかに内容が違う。ザッケローニ監督はちゃんと手当をしていた。

3-4-3システムについてはいろいろなことが言われているし、それについては改めて詳しく書こうと思っているが、一つ見落としがちなシンプルな視点として、『このシステムは背の高い選手を1人多く使える』ということを明らかにしておきたい。

居酒屋サッカー論の第一回を読んで頂いた方にはわかると思うが、セットプレーの守備はマークを持たずにボールに集中して跳ね返すプレーヤー、『城壁』の空中戦の強さが肝になる。カナダ戦、ヨルダン戦で、城壁を務めたのは遠藤だった。遠藤がヘディングする場面すら珍しいのに、城壁に置いて機能するわけがない。それは第一回で述べた通りだ。

ところが3-4-3では、栗原勇蔵がピッチに入る。これにより、普段よりも1人多く背の高い選手を守りに使うことができ、栗原がマークを行うことで、前田遼一がマークの任を解かれて城壁に入った。

この効果は非常に大きかった。城壁の前田がクリアしてくれたため、前半の終わり頃までのブルガリアのセットプレーは、ブレ球以外はほぼノーチャンスだった。

そして後半、4-2-3-1にする段階でセンターバック(今回は吉田麻也)を削ったが、サイドバックに内田篤人に代えて長身の酒井宏樹を投入したため、ここでもそれほど守備力を落とすことなく、城壁は1トップに代わって入ったハーフナー・マイクが務めた。ザッケローニ監督としては及第点のゲームマネージメントだったと思う。

それでも長谷部が、「失点以外にも危険なセットプレーのシーンがあった」と語るとおり、いくつかの危険なシーンはあった。前半43分には栗原がマークを外してヘディングを許し、アディショナルタイムには長谷部の体に当たったボールがあわやオウンゴールという場面。そして後半にはFKから本当にオウンゴールが決まってしまった。その理由には…、

●3-4-3による疲労からの集中の欠如
●ブルガリアの巧みなセットプレー戦術『城壁潰し』

この2つが挙げられる。

「正直、驚いた。」日本の問題点

まず、43分に栗原がマークを外した場面。

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居酒屋サッカー論 ~誰でもわかる深いサッカーの観方~

清水英斗

「ボールだけを見ていても、サッカーの本当の面白さはわからない!」日本代表戦や欧州サッカーなどを題材に居酒屋のサッカー談義を盛り上げる「サッカー観戦術」を解説します。「サッカー観戦力が高まる」の著者、清水英斗さんによる、テレビ中継の解説...もっと読む

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コメント

ikedashoten ちょんまげ隊長も絶賛! 5年以上前 replyretweetfavorite

tsunsan クララが立った!みたいに言うな 5年以上前 replyretweetfavorite

kaizokuhide ツンさんが読んだ! @tsunsan 分かりやすい! 5年以上前 replyretweetfavorite