もしかしたらモテていたかもしれない私

小説家の森美樹さんが自分自身の経験を交えながら、性を追及し、迷走する日々を綴るこの連載。よく聞く恋愛の悩みのひとつに、「好きな人には振り向いてもらえず、どうでもいい人ばかりがよってくる」というものがあります。森さんは20歳のころを振り返りながら解決策を考えていきます。

今でも忘れられない一言がある。20歳くらいの頃、よく当たると評判の占い師に言われたことだ。

「あんたは男を騙す才能がある。だけど、あんたが好きになる瘠せていて顔のいい男は、あんたを不幸にする。あんたが嫌いなデブでハゲのおじさんは、あんたに尽くしてくれる」。

バンドマンから受けた仕打ち

成人したばかりの私にとって、それは眠り姫の魔女の呪いくらいの衝撃だった。当時の私は、痩せていて顔のいい男性が大好物で、バンドやっていてひょろっとしていて青白くて猫背で、担当はギターです、みたいな輩ばかり好きになっていたのである。当然、幸せな恋愛であるはずがない。というより、恋愛関係にも至らず、都合よく扱われて終わりだった。モテる男性は、よだれを垂らして3回まわってだらしなく吠えて、羞恥も捨てるような女性のあしらいが、実にうまいのだ。

とはいえ、お金を貢ぐとかやり捨てされるとか、そういう仕打ちはうけていなかった。それ以前の問題で、なんていうか、蛇の生殺し状態とでもいいましょうか。手を出されるなら出されたほうがしあわせだよ! 覚悟もできるってもんさぁ! と、腹もくくれない状態だ。

具体的に暴露すれば、ライブの追っかけで私が日本の端まで飛び、連絡先もお互いの宿泊先も交換済みなのに、『地方だと他のスタッフに気を遣うし。わかるだろ?』的な長文メールが送られてきて夜が明ける、みたいな。

あのさぁ、ホテルにこもって寝ずに身体のお手入れをしている私って、ただのバカじゃん。他のスタッフって、地方の女だろうが。

とは、もちろん返信しない。『わかった。今日のライブも最高だった!』で、ひとり枕を濡らす。そんなエピソードが、いくつか(いくつも?)ある。

当時は少女小説を書いていたものだから「あなたのバンド、作中に出してあげてもよくってよ」とかいう、よくわからんアタック(死語)をしていた。不器用な過去の私、抹殺したい(その著作は絶版ですが、リアリティ満載のすばらしい作品ですので、どなたか再販してもよくってよ)。

男性が勝手に騙されていく

男を騙す才能があるというのも、当たっていた。悪事に手を染めたり、金を巻き上げたりはしていないが、私は何人か、おじさんやオタク系のお兄さんを騙した。いや、私は外見と中身のギャップが激しいので、男性が勝手に騙されていくのだよ。会話を交わしたわけでもないのに、なぜか不幸だと思われ、何もしていないのにいただきものをした。それも現金なら1000円~5000円、物品ならお饅頭とか柿などだ。いまひとつ貧乏くさい。

それはそれとして、確かに私はおじさんにはモテたと思う。いや、別にめずらしくモテた私を自慢したいのではない。おそらく誰しもが、求める人からはまったく求められず、管轄外の人ばかりよってくる、という経験をしているのではないか。自分はモテない、と思っている方は、もう一度人生を振り返ってみてほしい。あなたが追う蝶々はひらりと逃げてしまうけれど、蛾や蠅や蚊はいつもうろうろ側にいたのではないだろうか。そしてあなたは、蛾や蠅や蚊の良さにまったく気づかなかったのではないか(害虫に例えて申し訳ありません)。

その昔、顔のいい瘠せ型の男性ばかりを追い求めていた私に、姉が言った。

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アラフィフ作家の迷走性活

森美樹

小説家の森美樹さんは、取材や趣味の場で、性のプロフェッショナルや性への探究心が強い方からさまざまな話を聞くのだそう。森さん自身も20代の頃から性的な縁に事欠かない人生でした。47歳の今、自分自身の経験を交えながら、性を追及し、迷走する...もっと読む

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