ミックス。

第10回 勉強させていただきに来ました!

多満子は江島に捨てられた過去を断ち切るため、萩原と共に渚テクノロジー卓球部の練習場へ乗り込むが、そこにあったのは苛烈な特訓を受ける江島の姿だった。
月9ドラマ「コンフィデンスマンJP」の、古沢良太オリジナル脚本映画「ミックス。」シナリオを特別公開!

76 居酒屋(夜)

黙って飲んでいる多満子と萩原。

多満子「……恥ずかしい」

萩原「……」

多満子「……男とより戻したくて大会出るなんて……卓球舐めてるにもほどがある……勝てるわけない」

萩原「……」

そこに、どやどやと一団が入ってきて、すぐそばの席に座った。江島、愛莉ら卓球部一同である。

思わず顔を隠す多満子。

江島「マジで?いつ?」

男子部員「さっき。間違いなく富田さんだったってさ」

愛莉「えー怖いぃ~!完全ストーカーじゃん!」

女子部員「本気で江島君と結婚できると思ってたのよ、せっせとお弁当持ってきて」

江島「あれまずかったー、体調悪くなるんだよ」

愛莉「先輩、いくら速攻が得意とはいえヤバいのに手を出しちゃったね」

江島「ここまでイタイ女とは思わないだろ。手編みのマフラーの時点でやばいと思ったんだけどさ」

愛莉「あれキツかったー、それに自分にリボン巻いてプレゼントにする人今どきいます?」

一同、爆笑。

多満子、いたたまれなく、こそこそ出て行こうとする。が、ぶつかって調味料を倒した。

卓球部一同、多満子に気付く。

江島・愛莉ら「……」

多満子「……」

萩原、江島と愛莉の間に割り込んで肩を組み、江島の持っていたラケットケースからラケットを取り出す。

萩原「さすがいいラケットですね。ラバーもきれいに貼ってある。器用なんですね」

江島「……誰でもできますよ」

萩原「ところができない奴もいるんですよ。あんたらにはわかんないかもしれないけどさ、世の中には何をやっても不器用な奴がね」

多満子「……」

萩原「だけど……一生懸命生きてる奴をバカにするなよ」

江島・愛莉「……」

多満子「……」

多満子、駆け出してゆく。


77 同・表(夜)

たたずむ多満子のもとに萩原が来る。

萩原「(思わず笑う)」

多満子「……(不快)」

萩原「いや、ごめん……ただ、仕事なくして家族に捨てられた男と、男に捨てられて田舎に逃げ帰った女……みじめなミックスペアだなと思って」

多満子「……最悪のペア」

萩原「でもさ、お前まだ続けられるじゃねえか……15年のブランクが何だよ。続けたくても続けられない奴もいるんだよ」

多満子「……」

萩原「来年、あいつら潰すぞ」

多満子「……」

多満子「……(小さく)うん」

萩原「声が小さい!」

多満子「おう!」

歩き去ってゆく多満子と萩原。

萩原「さっさと足首治せ、多満子」

多満子「あなたはバックハンド直せ、ハギ」


78 山彦町・湖畔(朝)

多満子、足首を気にしつつ、ゆっくり走り始める。

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ミックス。

古沢良太 /コルク

偶然の出会いが、わたしの人生を変えたーー。 脚本家・古沢良太の映画「ミックス。」オリジナルシナリオを特別公開! 男女混合ダブルスに挑む、元“天才卓球少女”を演じた新垣結衣が、日本アカデミー賞主演女優賞を受賞した話題作。

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