読みたい人、書きたい人のミステリ超入門

第10回 『ふうん』な伏線じゃ驚けない(2)

どんなに美しい推理であっても、手掛かりがまったくなければ論理として組み上がらないし、解決のときに「実は」と証拠を出されたところで、後出しジャンケンとしか思われない――。
電子書籍文芸誌「yom yom」に掲載中の人気連載を出張公開。

◆伏線が拾われる打率は、イチロー以下と心得よ。
 十個伏線を張っても、良くて三つくらいしか読者は気付いてくれないし、覚えていてくれない。頑張って伏線を張って、三割しか機能しないのではがっかりかもしれないが、そういうときは、イチローだって四割打てないのだから、と思って諦めるしかない。
 つまり、渾身の伏線を一発ビシッと決めたところで、それに気付いてくれ、さらに記憶に留め、最終的に「伏線だったのか!」と分かってもらうのは、なかなかに大変だということだ。
 解決編の説明を読んでいて、「そんな場面あったっけ?」と思ったことはないだろうか。覚えていたとしても、「そういえば、あったような」くらいの曖昧な記憶になっていることは少なくない。まして、皆が皆、一気に最後まで読んでくれるわけではないから、時間をかけて読んでいるうちに、記憶は次第に薄れていく。
 それを責めることはできないし、他人の記憶を操作することもできない。書き手にできる唯一のことは、上手い伏線の弾を数多く撃って、一つでも多くの手掛かりを印象付けること、それだけだ。
 解決編に回想を挿入し、伏線場面の記憶喚起を促すことは出来る。だが、文字だけのデータ伏線では、それも難しい。「書いてあったでしょ」と言われたところで、「そんなの覚えてないよ」で終わってしまう。
 ビジュアルで伏線を残せ、というのは

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新潮社
2018-05-18

この連載について

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読みたい人、書きたい人のミステリ超入門

新潮社yom yom編集部 /新井久幸

ミステリ作家志望者、必読! 「新潮ミステリー倶楽部賞」「ホラーサスペンス大賞」「新潮ミステリー大賞」など、新潮社で数々の新人賞の選考に携わってきたベテラン編集長が考えるミステリの読み方・書き方の<お約束>とは――。電子書籍文芸誌「...もっと読む

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editor_of_SS 告知忘れてた。 約1年前 replyretweetfavorite