◆伏線が拾われる打率は、イチロー以下と心得よ。
十個伏線を張っても、良くて三つくらいしか読者は気付いてくれないし、覚えていてくれない。頑張って伏線を張って、三割しか機能しないのではがっかりかもしれないが、そういうときは、イチローだって四割打てないのだから、と思って諦めるしかない。
つまり、渾身の伏線を一発ビシッと決めたところで、それに気付いてくれ、さらに記憶に留め、最終的に「伏線だったのか!」と分かってもらうのは、なかなかに大変だということだ。
解決編の説明を読んでいて、「そんな場面あったっけ?」と思ったことはないだろうか。覚えていたとしても、「そういえば、あったような」くらいの曖昧な記憶になっていることは少なくない。まして、皆が皆、一気に最後まで読んでくれるわけではないから、時間をかけて読んでいるうちに、記憶は次第に薄れていく。
それを責めることはできないし、他人の記憶を操作することもできない。書き手にできる唯一のことは、上手い伏線の弾を数多く撃って、一つでも多くの手掛かりを印象付けること、それだけだ。
解決編に回想を挿入し、伏線場面の記憶喚起を促すことは出来る。だが、文字だけのデータ伏線では、それも難しい。「書いてあったでしょ」と言われたところで、「そんなの覚えてないよ」で終わってしまう。
ビジュアルで伏線を残せ、というのは
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