夢の管理人になる前の最後の仕事

【管理人の夢⑳】
アキラは、管理人は長くやり続けると体に負担がかかると言う。そして、なぜ私を管理人に選んだのか、そしてどうするべきかを教えてくれた。そして彼は管理人を引き継ぐ前に最後の仕事を私に託した……
<WEAVERの河邊徹がドラムスティックからペンに持ち替えて描いた作家デビュー作!>

イラスト:堀越ジェシーありさ



「思い出したみたいですね。裕子さんは随分大人になった」

「早く言ってよ。っていうか何でずっと敬語で話してるのよ」

「……恥ずかしくなってしまって」

 なぜか照れたような表情をしている。

 これでやっと、色々と腑に落ちたところがある。どうして、初めて来たはずのこの空間が懐かしく感じたのか。どうして、夢工場の入り口の扉を違和感なく閉めることができたのか。どうして夢の才能があったのか。

「ねぇ、なんであの時、私と遊んでくれたの?」

「……僕も子どもの頃、おかしな夢ばかり見てたんです。夢を制御する力もなかったので、怖い夢が続く時もありました。多分僕も、夢の境界線が脆かったんだと思います。
 覚えていないかと思いますが、裕子さんは初めてここに来た時、怖い夢から逃げるようにしてやって来ました。だから幼い裕子さんを見た時に、この子、自分と似てるなと思ったんです。
 怖い夢を見なくて済むなら、ここにいさせてあげてもいいかなって思いました」

「……優しかったのね。今さらだけどありがとう」

 アキラは小さく首を振った。

「それにあの頃は、僕も管理人になってすぐの頃でした。よく遊びに来る子がいても、別におかしなことでもないと思っていました。そしたら、前任の人にバレてこっぴどく叱られてしまって……。それからもしばらくはまぁいいかなと思ってたんですが……。早く『夢の修復』をしてあげなさいと言われました」

 ちょっと悲しそうな顔をして、アキラは飾ってある油絵とメモ帳の方を見ている。

「夢工場にとって、管理人になる人は、ちゃんと夢の力を持っている人じゃないといけないんです。その点で、夢の境界線が脆い人は、自由に夢の力を使える人が多いので適していると言えます。その人の体に悪影響があることを除けばですよ。だから、それをちゃんと直して、大人になってからまたここに来ることができたら、管理人になれる力がある可能性が高いんです」

「それで、私を誘ったのね」

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夢工場ラムレス

河邉徹

WEAVERのドラマー・河邊徹の作家デビュー作。バンドで作詞を担当してきた河邊の 〝言葉の世界〟をドラムスティックからペンに持ち替え、描いた「夢」をテーマにした長編作。 ...もっと読む

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