幼い頃に、管理人と夢工場で出会っていた

【管理人の夢⑲】
小さい頃に、自分が夢工場に自由に来ていたのを思い出した。その時に、おじさんが、私が夢工場にいられる理由は「夢の境界線が脆いからなんだよ」と言っていたことも……
<WEAVERの河邊徹がドラムスティックからペンに持ち替えて描いた作家デビュー作!>


イラスト:堀越ジェシーありさ



 走り回った景色があった。

 毎日いても飽きないほど、そこは色と音に溢れていた。

 流れていくカラフルな液体。転がる小さなボール。

 ごうごうと音を立てて、その機構は休みなく稼働する。

「どうしてここに来ちゃいけないの?」

 私は純粋に、心からの疑問として尋ねた。本当に来ちゃいけないのなら、入れなくすればいいだけで、そうしないのは、やはり来てもいいということなのではないか。そう幼心に解釈していた。彼が本当に怒っているようには見えなかったことも理由かもしれない。

「ルールなんだって。ほら、マニュアルにも書いてある。この前も見せたでしょ」

 彼、アキラは困ったように言った。きっと二十代後半くらいだったと思う。細身で背が高く、切れ長の目をしていた。あれは私が小学生になったくらいの頃だろう。

 小さな私にとって、アキラは寡黙な父より話し相手になってくれたり、一緒に遊んでくれたりするいい友達のような存在だった。そして何より、秘密を共有する仲間でもあった。

「漢字読めないんだもん」

 そう言って、私は差し出されたマニュアルを払いのけた。

「僕だって、バレたら怒られるんだよ。絶対この『ロビー』から出ないでよ」

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夢工場ラムレス

河邉徹

WEAVERのドラマー・河邊徹の作家デビュー作。バンドで作詞を担当してきた河邊の 〝言葉の世界〟をドラムスティックからペンに持ち替え、描いた「夢」をテーマにした長編作。 ...もっと読む

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