河邉徹
頭の隅に放置されていた記憶の宝箱
【管理人の夢⑱】
4人目は、ちょっと変わった子だった。彼は夢の境界線が脆く、他人の夢を見てしまうという能力を持っていた。彼はその能力を使ってクラスメイトの夢を修正することを依頼しに来たのだ。その願いを叶える一方、私は夢工場の管理人のおじさんが、自分を次の管理人に選んだ理由を知ることになる……
<WEAVERの河邊徹がドラムスティックからペンに持ち替えて描いた作家デビュー作!>

イラスト:堀越ジェシーありさ
「なんで私を管理人にしようと思ったの?」
ある日、いつものようにロビーで私が来るのを待ってくれていたおじさんに、私は何の気なしに尋ねてみた。私自身、しばらく管理人をしていて思ったのだが、たまたま夢工場にやって来た人を、あんな風に勧誘するのはちょっと不自然だからだ。
「理由は色々あるんですよ」
おじさんは少し考えてから言った。
「例えば? 才能がありそうだなって思ったとか?」
「それも正しいです」
「好みのタイプだったから?」
「それは違います」
ちょっとふざけただけなのに、バッサリである。
「今日辺り、ちょっと変わった子が来ると思いますよ。心構えをしていてください」
私がいない時は、おじさんが「モニター」で夢の監視をしてくれている。何か気になる夢でも見つけたのだろうか。こんなことを言うなんて珍しい。
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この連載について
河邉徹
WEAVERのドラマー・河邊徹の作家デビュー作。バンドで作詞を担当してきた河邊の
〝言葉の世界〟をドラムスティックからペンに持ち替え、描いた「夢」をテーマにした長編作。
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著者プロフィール
1988年6月28日、兵庫県生まれ。関西学院大学 文学部 文化歴史学科 哲学倫理学専修 卒。ピアノ、ドラム、エレクトリック・ベースの3ピースバンド・WEAVERのドラマーとして2009年10月メジャーデビュー。バンドでは作詞を担当。
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