夢から出荷された〝未来の要素〟が及ぼす影響

【管理人の夢⑮】
夢工場は稀に、非常に影響力の強い夢の要素を送り出すことがある。それが〝未来〟と〝過去〟だ。最初の訪問者の夢には、恐怖、悲しみ、絶望といった負の要素とともに、「未来」が送られていた……
<WEAVERの河邊徹がドラムスティックからペンに持ち替えて描いた作家デビュー作!>


イラスト:堀越ジェシーありさ



「えっと、ここはどこ?」

 訪問者と会うようになってしばらくしてから気づいたことだが、大抵の人がこのロビーに入って来た時に、最初にそう言うのだ。ここに来る人は年代も性別も、抱えている事情も様々だ。なのに不思議なことに、「あなたは誰?」でも「これは夢?」でもなく、ここがどこかを尋ねる。
 そう聞きたくなるような、夢の中特有の共通した感覚があるのかなと思う。そう言えば私も、初めてここに来た時、おじさんにそう尋ねたかもしれない。

 この夢工場は、誰にでも容易に来れる場所ではなかった。扉は必ず、夢の中のどこかにあるが、そう簡単に見つけることはできないのだ。探そうと思わなければ目につかないところにあり、本来の夢の物語とは関係のない場所で沈黙を守っている。つまり、夢の物語からはみ出すことのできる、明晰夢を見ている人でしかこの夢工場に辿り着くことはできない。

 それは同時に、夢工場で解決すべき問題を抱えている人にとっても、簡単にここを見つけることはできないということでもある。それ故に、管理人の立場としては歯がゆくなることもあった。その時、私が監視していた夢は、ある大学生の男の子のものだった。

 夢に、ノイズが入っていた。モニターに映し出される夢の景色に、時折いびつな線が入る。ノイズはその人の夢に、何か不具合が起きていることの証しだ。

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夢工場ラムレス

河邉徹

WEAVERのドラマー・河邊徹の作家デビュー作。バンドで作詞を担当してきた河邊の 〝言葉の世界〟をドラムスティックからペンに持ち替え、描いた「夢」をテーマにした長編作。 ...もっと読む

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