最近、ほんとうに外国人観光客が増えましたね。小売の現場では、こうした新しいお客さんに対応するために、さまざまな工夫をしています。例えば、オニツカタイガーというスニーカーが外国人観光客にとても売れています。オニツカタイガーを売っているお店には「日本製」とか「Made in Japan」というポップを貼っていることが少なくありません。日本人からすれば、あまり意味がないかもしれませんが、外国人観光客からすれば、大事な情報なのでしょう。
今日は、この「メイド・イン・○○」について考えてみましょう。「メイド・イン・ジャパン」であることは、高品質の証であると多くの人が認めるところでしょう。しかし、かつて「メイド・イン・ジャパン」が持つイメージは、「安かろう悪かろう」というものでした。
戦後、敗戦国になった日本がアメリカに輸出していたのは、ブリキのおもちゃや、飾りのついた爪楊枝などでした。そういうものには「メイド・イン・ジャパン」(あるいは「Made in Occupied Japan」)と書いてありました。当時のアメリカ人からすれば、こういったモノは「貧しい国から輸出された粗悪なモノ」というイメージでした。
そういったイメージが変わったのは、ソニーやトヨタ、ホンダといったメーカーが高品質な製品を輸出し世界市場を席巻したからです。そのあたりの経緯は、ソニーの創業者の盛田昭夫さんの自伝に詳しく描かれています。30年前に書かれたこの本のタイトルは、まさに『MADE IN JAPAN―わが体験的国際戦略』というものでした。
ところで『バック・トゥ・ザ・フューチャー』という映画を見たことがありますか?1985年から1990年にかけて3作制作された大ヒット映画です。マーティという高校生とドクというちょっと変わった科学者が、タイムマシンで過去や未来を行き来するというストーリーです。その第3作の1955年のシーンで「安物を使うからだよ。ほらMade in Japanだって」と言ったドクに、マーティは「なに言ってんのドク?すごいモノはみんな日本製なんだよ」と言い返しています。それを聞いたドクはただただ驚くのでした。
1985年を生きるマーティからすれば、日本といえば、クールなプロダクトを作ってくれる国です。しかし1955年を生きるドクからすれば、日本製と言えば粗悪なものでしかないのです。この映画が作られた当時が日本経済の絶頂期であることを考えると、このやりとりの歴史的意義が見えてくるはずです。
このように国や場所のイメージは、そこで生産されているモノに反映されることがあります。これを原産国効果(Country Of Origin Effect)と呼びます。国際マーケティングの分野では、原産国効果について非常に分厚い研究あります。
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