復讐手帖

赤ん坊の写真と髪の毛入りの手紙が……過ち男が体験した怖い復讐!(終)

その昔から、夫の浮気を見つけて携帯電話をいくつも折ったとか、夫が大事にしているパソコンを破壊したとか、そういう話はよくあった。そんな、カッとなって制御できない怒りや、持続的な恨みの感情から女性たちが起こすさまざまな場面をこれまで紹介してきた。最終回は、男たちの側から、自らの過ちが招いた怖い体験を聞いてみた。行き場を失った女の想いが向かう果てを描いた『復讐手帖』をcakesで特別連載!

前篇<恋人が狂気に陥るとき>

女がなぜ怒って復讐しようとまで思うのか。どうも男はそのあたりの女性の心理をよくわかっていないような気がする。「確かに。女性がなぜ怒るのかがわからないことは多いですね」
そう話すのは、ジュンイチさん(31歳)だ。彼は1年ほど前、2年つきあっていた女性から婚約破棄をされた。
case❶ 【 出張中に家財道具を売り払われ、音信不通に 】
「ちょうど婚約した頃に元カノにばったり再会したんですよ。だからといってよりを戻す気なんてまったくない。元カノのほうももう結婚していて、懐かしいから何度か会っただけ。それなのに彼女から、裏切り者と糾弾されて……。本当に居酒屋で会ってしゃべっただけなのに、疑われてしまって。そんなことなら、いっそ元カノとエッチしちゃえばよかったと思ったくらいです」
元カノとは高校の同級生で、10代後半から20代前半の多感な時期を、くっついたり離れたりしながら過ごした。人生の方向性が違っていたのかいつしか別れ、数年のブランクがあって再会したため、積もる話もたくさんあったのだ。ところが彼女は、「絶対に関係がある」と決めつけた。
「その頃、僕たちはすでに新居を用意して半分一緒に暮らしているような状態だったんです。家電や家具は全部新しいものを僕が買って。僕が浮気したのしないのでもめていたとき、どうしても海外に1週間出張しなければいけなくなった。『帰ってきてから、ちゃんと話し合おう』と言って出かけました。1週間後、帰ってきたら家の中、何もなかったんですよ」
ついでに彼女もいなくなっていた。1週間のうちに彼女は冷蔵庫からテレビ、ソファやテーブルに至るまで、何もかも売ってしまったのだ。テレビも冷蔵庫も最先端のものだったから、ジュンイチさんはびっくりして彼女に連絡をとろうとした。
「ところが彼女、僕の電話を着信拒否、SNSもブロックしているんです。2年もつきあってきて結婚しようという仲だったのに、話し合いもできないのかと愕然としました」共通の友人に連絡をとると、みんなジュンイチさんの言動に怒っているという。彼女は、ジュンイチさんが裏切って元カノと会っていただけではなく、抗議をしたら殴られたと言いふらしていたのだ。
「僕は女性に暴力なんてふるったことはありません。もちろん彼女に対しても、大きな声さえ上げたことはない。僕の友だちは『そんなことはないはずだ』とかばってくれたらしいけど、彼女側の友だちは『男って一対一の関係になると、何をするかわからないわね』ということになっていたようです。いずれにしても、そんなしょうもない噂をふりまくなんて、彼女は何を考えていたのか……」
誤解から、いきなり家財道具を売り払っての逃走に、ジュンイチさんは彼女の意図がまったく理解できず、戸惑うばかりだった。彼の男友だちは「そもそも彼女に他の男がいるんじゃないか」とまで言い出した。
「彼女はおそらく関西の実家にいるはずだろうと、週末、訪ねてみたんです。そうしたら、ご両親が出てきて、帰ってきていないと。僕が真実を話したらびっくりされていました。あの雰囲気だと本当に知らなかったんだと思う」
その後、彼女は友人の家にいることがわかった。ジュンイチさんは何度も話し合おうとしたが、彼女は応じない。数か月試みて、彼はすべてを諦めた。
「彼女と住むために借りたマンションも解約しました。あの浮気疑惑だけで、あんな行動に出るような女性と結婚しなくてよかったと、みんな言っていましたが、僕は彼女のことが本当に好きだったから……。いまだに釈然としないんです」
彼女は、自分の恋人が女友だちと食事をしただけで「浮気」と認定するタイプの女性だったのだ。そういう価値観をすりあわせておかなかったジュンイチさんに非があると思えないが。それにしてもすべて売り払って、そのお金を持って逃げるのは筋が違う。思わずジュンイチさんにそう言ったら、「彼女はそうせざるを得ない怒りを抱えていたんでしょう」と彼は、彼女をかばう。彼の愛情は本物だったのだろう。彼を失ったことは、彼女の人生にとって大きな悲劇ではないだろうか。

case❷ 【 自宅に次々送りつけられてくる旅館の請求書、大人のおもちゃ…… 】
不倫の場合、別れ方には要注意である。もちろん相手が納得する別れなどめったにないが、「こんなヤツとつきあっていた自分が情けない」と彼女に愛想をつかしてもらうくらいの覚悟がなければいけない。男は比較的「いい人」でいたがるので、最後までつい優しく振る舞ってしまい、それがかえって彼女の怒りに火をつけることになるのだ。
8年もの間、不倫関係にあった15歳年下の部下との別れを決意したノリユキさん(50歳)。
「彼女とのことが妻にバレかけたんです。もちろん私は認めなかったけど、妻は非常に腹を立てていました。私は婿養子として妻が父親から受け継いだ会社に勤めていたので、離婚イコール無職になってしまう。これはまずいと、彼女には大げさに『妻にバレて裁判沙汰になりそうだ。きみにも多額の慰謝料請求がいく。だからしばらく距離を置こう』と言ったんです。その後も彼女は何度か職場で私に話しかけようとしたり、スマホから連絡してきたりしたんですが、無視するしかなかった。ところが自然消滅を狙ったことが彼女の逆鱗に触れたようです。半年ほどたった頃、京都の1泊5万円もするような旅館から請求書がきたんですよ。他の高級ホテルからも続々と。おそらく彼女の仕業でしょう。妻は怒りまくって、彼女をクビにしました。裁判沙汰にするか辞めるかどちらかを選べと彼女に言ったそうです」
これで安心できるかと思いきや、彼女から妻あてに宅配便がやってきた。今まで彼が彼女に買った大人のおもちゃやエロい下着、彼女の部屋に置いていたAVなどなど。
「それだけじゃないんです。前におもしろがって彼女とのエッチを動画で撮ったことがあるんですが、それが私しか映ってないように編集されたDVDも入っていた。私はそんなものが送られてきたとは知らなかったんですが、ある日、寝室で妻がいきなりそれを再生して……。心臓が止まるかと思いました。妻に『変態!』『この恥さらし!』と罵倒された上に、専務から平社員に降格されました。社長は妻です。いっそ離婚してくれと言ったのですが、『そんなことできるわけないでしょ。あなたは一生、恥をさらしながら生きていくのよ』と」
彼女に復讐されたあげく、妻からも復讐されている。身から出た錆ではあるが、なんとも気の毒な話だ。

部屋で小便し嫌われる、という強引な別れ方

つきあい方も大事だが、やはりどういう別れ方をするかによって、あとから恨まれるかどうかが決まるのかもしれない。知人のモテ男いわく、「特に不倫の場合は、土下座しまくって憐れがられて別れてもらうか、もしくは本気で嫌われるかしかない」と言う。彼は本気で嫌われるために、深夜、独身の彼女の部屋に突撃し、酔ったふりをして部屋で小便をしたことがあるという。
「さすがにその場で追い出されました。『二度と来るな!』と罵倒されたけど、ああでもしなければ彼女とは別れられなかった。もちろん、申し訳ないと思うけど……」

もう決して関わりたくないと思うほどのことをしなければいけないと彼は力説した。一時は愛した人に対し、別れたいがゆえにそこまでするのはどうかと思うが、既婚の彼が今まで一度も相手から復讐されていないのは、最後に思い切り嫌われるからなのだという。

もちろん、相手の性格にもよるだろう。たまたま性格のいい女性たちに出会ってきたのだと個人的には思う。そうだとすれば、きちんと話し合って別れることも可能ではないだろうか。
「いや、別れとなると豹変する女もいるんですよ、世の中には」
彼は顔をしかめながらそう言った。

case❸ 【 いまだに横行する、コンドームに穴を開けるという古典芸 】
「ごく普通に恋愛してきたつもりだったのに、どうしてこんなことになってしまったのか……」
がっくりと肩を落としてそう言うのは、シュンさん(31歳)だ。

28歳のとき、学生時代からつきあっていた彼女にいきなりフラれた。
「周りはみんな、僕たちが結婚すると思っていたでしょうね。8年もつきあっていたし、ケンカもしたけど僕には彼女しかいないと思っていた」
ところがいきなりの破局。彼女は別の男性とさっさと結婚した。相手は大きな企業の御曹司だったとか。「そんな女だったのか、とがっかりしましたが、共通の友人から、彼は性格もいいと聞いさらに落ち込みました。僕がどうがんばっても彼には勝てない。男として価値がないとさえ思いました」
そんなとき、親切にしてくれたのは職場の7歳年上のトモコさんだった。シュンさんを食事に誘ってくれ、自分が通っているスポーツクラブも紹介してくれた。

「職場では“お局”扱いされている女性だけど、確かにあの頃、彼女に救われました。彼女が手を差し伸べてくれなかったら、僕は会社も辞めて引きこもっていたかもしれない」
シュンさんとしてはあくまで先輩と後輩のつもりだったが、あるとき酔った勢いで彼女の部屋に泊まってしまった。それ以来、彼女は「恋人然」として彼に寄り添うようになった。
「その時点で、酔った勢いだった、ごめんと言ってしまえばよかったんだけど、職場が同じということもあって、なんとなくつきあっているのかいないのかわからないような感じになってしまったんですよね。それが大失敗でした」
その後、シュンさんはそのスポーツジムで2歳年下のリョウコさんと知り合った。一緒にプールで泳いだりスカッシュをしたり。彼女は以前からスカッシュをやっていたそうで、手取り足取り教えてくれた。「帰りにはビールを飲んで……。週に2回くらい会っているうちに、どんどん彼女を好きになっていった。恋人はいないと言うので告白したら、『私もあなたのことが好き』と言ってくれて。とんとん拍子で、口約束だけど結婚したいねということになったんです。ところが、事情を察したトモコさんから、『どういうこと?』と待ったがかかった。彼女とはスポーツジムでもなるべく会わないようにしていたんですが、何度か僕らのことを見かけたようです。『彼女のことが好きになって。ふたりとも結婚の意志があるんです』と言ったら、『私はどうなるの?』としがみつかれたんです。思わず、『だってオレたち、つきあってないじゃん』と言っちゃったんですよね」

それを聞いたトモコさんは激怒、職場のみんなにバラすのはもちろん、リョウコさんとも闘うと脅した。毅然としていればよかったのだが、シュンさんはリョウコさんとの関係にヒビを入れたくなかった。そこでどうしたらすんなり別れてくれるのかトモコさんに尋ねると、一度でいい、最後に近くに1泊旅行に連れていってほしい、と。そうしたらすんなり身を引くとトモコさんは約束した。それで別れられるならと、彼は近くの温泉へ彼女を連れていった。
「当然、夜は迫られました。気持ちはしたくないのに、体が反応してしまう。彼女が差し出したコンドームを着けてコトに及びました。その後まもなく、彼女は退職。ほっとしたんですが、数か月後、リョウコとの結婚が本決まりになりつつあった頃、トモコさんが大きなお腹で歩いていたという目撃情報が続出したんですよね。まさかと思ったけど、僕がとやかく言うことではない。するとさらに数か月後、僕らが結婚式場を決めるのとほぼ同時に、『あなたの子です。責任とってね』とハートマークが書かれた手紙と、赤ちゃんの写真がトモコさんから送られてきました。『疑うなら調べてみて』と赤ちゃんの髪の毛まで」

彼はパニックになったという。もちろんリョウコさんには話せない。だからといってトモコさんと結婚する気にはなれなかった。彼女が年上だからではない。性格が合わず、やっていけないと思ったからだ。

「こうなったらしかたがない。リョウコにすべてを話して許しを請いました。リョウコとつきあう前の話にしようとしたんだけど、時期的に矛盾が出てきてしまって。『結局、最後に関係をもったのは私とつきあっているとき、しかも結婚しようと話していた頃じゃない!』と怒られて……。別れたくて行った温泉で、トモコさんはコンドームに穴を開けたんでしょうね。それに見事にひっかかってしまった。リョウコは『時間がほしい』と言ったけど、結婚式場を本契約する直前、『ごめん、どうしても無理』って」

結婚できたとしても、トモコさんの子が本当にシュンさんとの間の子なら認知はしなくてはならない。リョウコさんは、それが耐えられないと言ったそうだ。
「トモコさんにしてみたら、最高の復讐だったでしょうね。その後、DNA鑑定をしたところ、僕の子ではなかったことがわかりました。あわててリョウコに連絡をしたけど、『あなたが浮気したことは真実よね』と。もう気持ちは戻らないと言われたんです」
シュンさんはトモコさんを責めた。だが、トモコさんは、「絶対にあなたの子だと思ったのに」と悔しそうに唇を噛みしめるだけだったという。
「もし僕の子であっても、認知はしても結婚はしなかったと思います。あの時点でDNA鑑定を先にするべきだったのかもしれません。でもどちらにしても式場の本契約は迫っていたから、リョウコをごまかし続けるのはむずかしかった。正直に言うしかないタイミングで、ああいうことをしかけてくるってすごいですよ……」
すっかり人間不信になってしまったシュンさんは、当分、恋などしたくないと夜ごと、男友だちと飲み歩いているそうだ。
それぞれの気持ちがわからなくはないだけに、この話は非常に印象に残った。これから結婚してふたりで家庭を作っていこうとするとき、裏切られたことが発覚し、絶望したリョウコさんの気持ち。どうしても彼をひきとめたくて、女の最後の武器である「妊娠」を使ったトモコさんの気持ち。そして、どうにもならずに引きずられてしまったシュンさんの気持ち。少しタイミングがずれれば、こんなことにはならなかっただろうが、そこでがちっと歯車が噛み合ってしまったために、誰も幸福にはならなかった。
トモコさんの子の父親が誰かはシュンさんも知らないと言う。子どもまで巻き込むなんてと眉をひそめる人も多いかもしれないが、それだけトモコさんは必死だったのだろうとも思う。恋愛を成就させるとか伴侶を得るとかは、そう簡単なことではないのだ。生きていくのは大変なことなのだとつくづく感じる。

後編<妻の豹変>

最後には妻と恋人、両方に棄てられ……

妻と恋人が男を取り合うこともあれば、すべて発覚した段階で、両方の女性が手を引くケースもある。
2年にわたって不倫をしていたテツオさん(48歳)は、不倫が妻にバレているとは思っていなかった。

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この連載について

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復讐手帖

亀山早苗

別れた男、不倫相手、夫……。男の裏切り、心変わり、嘘の塗り重ねに、行き場を失った女性たちの想いが”復讐”という形で狂気に変わっていく。独身男女の愛がこじれたとき、夫の不倫を知ってしまったとき、自分自身の不倫の末……など、実際にあった復...もっと読む

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