ミックス。

第9回 わかってんだよ、もう元に戻ることはないってことくらい

負けっぱなしの人生を逆転しようと、全日本選手権に挑戦したフラワー卓球クラブだったが、結果は惨敗で……
月9ドラマ「コンフィデンスマンJP」の脚本家、古沢良太の映画「ミックス。」オリジナルシナリオを特別公開!


70 春の丹沢の山々

71 山間部・高速道路建設現場

散水車が大きく弧を描いて水を撒いている。

昼食休憩。

萩原、コンビニのおにぎりを食べようとしている。

現場主任「もやし、あっちの方だけは元気らしいな」

現場主任が顎で示した方を見ると、多満子が差し入れを持って訪ねてきている。色めく作業員たち。

萩原「……」

多満子「……おかず持ってきたんだけど」

萩原「向こう行こう。……あんたがおかずにされる」

多満子「?」


72 同・同・はずれ

見晴らしのいい場所で、昼飯を食べる萩原(まずい)。そばに多満子。

多満子「……謝ろうと思って……無理やり大会引っ張り出して」

萩原「……」

多満子「また出てきなよ、これ以上会員減るとやばいんだ」

萩原「……足の具合は?」

多満子「……まあまあ、歩くのもリハビリ」

萩原、多満子の足を取り、包帯を取り始める。

多満子「ちょ、ちょっと、何すんのよ!こら!変質者!」

手慣れた感じで包帯を巻き直す。

多満子「……」

萩原「足首はこういうふうに巻くんだよ」

多満子「……何者?」

萩原「……」

多満子「少しは自分のこと話してよ、みんなあなたのこと気味悪がってるんだから。私も」

萩原「……元プロボクサー……ライト級日本ランク2位」

多満子「……マジ?」

萩原「ああ、変質者じゃない……娘と同じ学校の制服着てたから……娘のこと何か聞けるかなって思って……」

多満子「……娘?」

萩原、躊躇しながらも妻子の写真を渡す。

萩原「……元女房の連れ子なんだけど……それでも、お父さんて呼んでくれたときは……何て言うか、こいつらのために頑張ろうって思えて……でも会えないんだ」

多満子「……なんで?」

萩原「3年前に目をやって引退してさ、色々仕事したけど、どれも続かなくて……酔っ払って帰ったら、女房が知らない男連れ込んでた」

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

全脚本+映像では未収録となった幻のシーンが付録についた完全版。著者による描き下ろしの表紙、挿絵イラストも!

この連載について

初回を読む
ミックス。

古沢良太 /コルク

偶然の出会いが、わたしの人生を変えたーー。 脚本家・古沢良太の映画「ミックス。」オリジナルシナリオを特別公開! 男女混合ダブルスに挑む、元“天才卓球少女”を演じた新垣結衣が、日本アカデミー賞主演女優賞を受賞した話題作。

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

Tweetがありません