第2回】イチローの場合(91年オリックス入団)

ダイヤの原石を発見し、口説き落とし、育て上げる。プロ野球チームを陰で支えるスカウトたちの眼力と技術力と人間力は、どんな組織にも通用する知恵の宝庫だった! 今回のcakesでは、世界的スターとなったイチロー選手を見抜いた二人のスカウト(オリックス三輪田勝利氏、日本ハム三沢今朝治氏)のエピソードをご紹介。

固定観念を捨てると最大の掘り出しものと出会う

 メジャー・リーグでも年間最多の262安打(2004年)を記録し、MVP、首位打者2回と日本人メジャーリーガーで最高の成績を残したのがイチローである。もちろん日本球界時代も、MVP3回、首位打者7回などタイトルを数え上げたらきりがない。
 イチローは愛工大名電高校時代に2度甲子園大会に出場。2年生の夏の大会ではレフト、3年の春は投手として出ているが、ともに初戦で敗退した。投手イチローは松商学園に10安打を浴びた。あるスカウトは、「投手としては粘りが無かった。球離れが早くてね、野手が投げているみたいなんだ」と語っている。

 イチローは打者としても3番を打ったが、5打席ノーヒットだった。三振も一つしている。3年の夏の大会では、県大会決勝で敗れて、甲子園に姿を見せることはなかった。ただし、夏の県予選での打率は7割5分もあった。
 多くのスカウトは投手としてイチローを見ていたから、見切りをつけて去って行った。しかし、その中でも何人かのスカウトはイチローの打撃センスに光るものを感じていた。

 その一人がオリックス・ブルーウェーブ(現オリックス・バファローズ)のスカウト三輪田勝利だった。三輪田は、イチローが高校2年のときに、甲子園大会で初めて見て、バットコントロールのよさに舌を巻いた。彼が3年のときの選抜大会も見た。やはり体の線が細く、力不足の印象は否めなかったが、初夏に愛工大名電高校のグラウンドを訪れたとき、評価が一変した。パワーアップしていたからである。バットのヘッドスピード、手首の返しのよさも格段に巧くなっていた。これはプロで通用すると三輪田は判断した。

 イチローは、夏の県予選で熱田球場のライト場外へ本塁打も打った。打撃のパワーも実証済みだ。オリックスはイチローを平成3年のドラフト会議で4位指名し、入団させた。もちろん即戦力としてではなく、3、4年後出てくれればという将来性を買った評価である。

 三輪田がイチローを追いかけている中、もう一人のベテランスカウトがイチローに密かに注目していた。日本ハムのスカウト三沢今朝治である。

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人を見抜く、人を口説く、人を活かす

澤宮優

ダイヤの原石を発見し、口説き落とし、育て上げる。プロ野球チームを陰で支えるスカウトたちの眼力と技術力と人間力は、どんな組織にも通用する知恵の宝庫だった! 伝説の名スカウトたちに学ぶ、口説きの奥義。

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