名刺ゲーム

会社のために、上司のために、僕は「犯人」になることを選んだ。

会社のためだ。遠藤、頼む。なんとか成立させてくれ、なんとか――。僕のヒーローだった上司の片山さんは、会社を守るためにやってはいけないことをした。すべてが明るみに出た時には、会社には見せしめになる「生贄」が必要だった。「犯人」を売らない限り、この事件は終わらない。だから僕は自分が責任をかぶることにした……。胸に刺さる描写満載の『名刺ゲーム』!

3-2 Next Changeディレクター 松永累

 蚊が好む血液型の実験は、遠藤さんっていうディレクターの担当。片山さんが若い頃から一緒にやってる人です。僕はこの人があまり好きではなかった。会話の七割が片山さんの愚痴と文句。「あの人も丸くなった」「ダサイ」「センスが古い」とか、「俺がいなくなったらこの会社も終わりだ」とか。この人はこの人で、若手に愚痴を言うことで心のパワーバランスを保っているんでしょう。もちろん、本人に言う勇気はない。

 蚊の実験に片山さんは直接関与してなかった。片山さんがロケ現場に来ることは減ってましたから。この実験、神田さんがうちに振っただけあって、最初に実験をやった時に思うような結果が出なかったんです。A、B、O、AB、差が出なかった。遠藤さんはその実験結果をVTRにまとめ、片山さんと神田さんに見せた。失敗という結果も含めて放送したことも、今までにないわけじゃない。面白くなる時もある。でもね、神田さん、厳しかったんです。

—これじゃ面白くもない。絶対成立させてください。

 確かに今まで片山さんは「ミステリースパイ」を成立させてきた。ボノボの時もペンギンの時も、粘りと力で成立させてきた。だけど、うまくいかないものは仕方ない。片山さんがそう判断したのを察知したのか、神田さんが追い込みました。

—片山さんのところでできなかったら、他の会社に頼みます。

 視聴率にも毎分視聴率という、一分ごとの視聴率が折れ線グラフのデータになったものがある。もし他の制作会社が作った実験ロケで視聴率の折れ線グラフが急上昇したら。信頼と毎分視聴率のグラフは同じ。テレビなんてそんなものです。分かりやすいんです。

 片山さんは「分かった。なんとかするよ、カンちゃん」と言って、二度目の実験を行うことに決めた。遠藤さんは神田さんの前では言えなかったことを、会社に戻ってから爆発させた。

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名刺ゲーム

鈴木おさむ

家族も部下も切り捨て、人気クイズ番組のプロデューサーまで上り詰めた神田達也。ある夜、息子を人質にとられた神田は謎の男から「名刺ゲーム」への参加を命じられる。だがそれは、人間の本性を剥きだしにしていく《狂気のゲーム》だった――。WOWO...もっと読む

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marekingu #スマートニュース 2年以上前 replyretweetfavorite