5 孤独とLGBT
【18歳の問い⑤】
これまでずっと女性に対して恋愛感情を抱いていたのですが、最近、男性に対しても胸がときめく自分を発見して戸惑っています。家族や友人に話したら変態だと思われそうで、誰にも相談することができません。こんな自分はおかしいのでしょうか?
●人間の性のあり方の多様性を知ろう
近年、同性愛(L:レズビアン G:ゲイ)や両性愛(B:バイセクシュアル)、性同一性障害(T:トランスジェンダー)などの性的マイノリティに関するトピックが「LGBT」という総称でカテゴライズされて、メディアで取り上げられる機会が増えています。
18歳前後の男子にとって、学校の授業、テレビやネットのニュースでLGBTという言葉に触れる機会が増えた一方で、当事者と接する機会、そして性的マイノリティに関する具体的な知識を学ぶ機会はまだまだ少ないのが現状ではないでしょうか。
そこで、人間の性のあり方の多様性について、簡単におさらいしておきましょう。
人間の性のあり方は、生物学的性(身体の性別)、性自認(心の性別=自分が自分の性別をどのように意識しているのか)、性的指向(好きになる性別)の3つの要素で説明することができます。これらの要素に従って区分けをすると、人間の性のあり方は、上の表のように整理することができます。
このように整理すると、私たちが普段当たり前のものとみなしている「女性を好きな男性(男性異性愛者)」と「男性を好きな女性(女性異性愛者)」というカテゴリーだけが人間の性のあり方の全てではない、ということが理解できると思います。
そして、この二つのカテゴリーに当てはまらない人たちが社会の中で見落とされ、孤立してしまいがちであるということも、理解しやすくなると思います。
分かりやすくするために表で説明しましたが、生物学的性・性自認・性的指向は、いずれも「男と女」という単純な二分法で分けられるものではなく、個人個人によってグラデーション(濃淡の段階的な推移)があります。
生物学的性には、半陰陽(インターセクシュアル)のように、「50%は男性、50%は女性」といったような存在が知られています。
性自認も、全ての人が「自分は100%男性である」「100%女性である」と感じているわけではありません。ある人は「自分の80%は男性、20%は女性」と感じていたり、また
ある人は「30%は男性、70%は女性」と感じていたりするように、個人個人によってグラデーションがあります。中には「自分は男でも女でもない」と感じている人(Xジェンダー)もいます。
性的指向に関しても、相手が男性であるか女性であるかを問わずに恋愛感情を抱くことのできる人や、女性とは恋愛だけだが、男性とは恋愛も性交渉も可能という人もいるなど、幅広いグラデーションがあります。そもそも恋愛感情や性的欲求を全く持たない人(無性愛者:アセクシュアル)もいます。
あまりの多様性に頭がクラクラしてきたかもしれませんが、あなたも私も含めて、全ての人はグラデーションの中で揺らいでいる存在だと考えることができます。だとすれば、あなたが女性と男性、いずれにも恋愛感情や性的関心を抱く、ということ自体はおかしくもなんともありません。
なぜ同性愛者や性別違和を持った人が生まれるのかは、はっきりと分かっていません。分かっていることは、同性に対して恋愛感情を抱くこと、自分の性別に対して違和感を抱くことは、病気でもなければ、誰かに後ろ指をさされるようなことでもない、ということです。
誰に対して(何に対して)、いつ・どこで、どのような形で恋愛感情や性的関心を抱くかは人によって多様なので、それに対して引け目を感じたりする必要は全くありません。
●カテゴライズ「からの」自由
さて、ここまでは教科書的な回答です。LGBTに関する情報や社会的理解が一定の水準で浸透した現在、こうした回答には、あなたも既にどこかで出会っているはずです。
それでは、こうした回答によって、果たしてあなたは楽になれたでしょうか?
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