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台湾で日本の歌番組を見ていたらこんな字幕が出た。
「性感地帯」
えっ? 性感……えっ??? ってなってドギマギしたが、テレビ画面に現れたのはSexy Zoneだった。ジャニーさんに命名されたというジャニーズの5人組ユニットSexy Zoneは、確かに、「性感地帯」という意味である。
その通り。
その通りなんだけどさ。
日本語話者の私はドギマギしてしまう。中国語で言うところの性感地帯を「セクシーゾーン」とカタカナで表現し、さらに「セクゾ」と略して親しむ、日本語で育った私としては。
日本の性のカタカナ略語、中国語ではそのまんま
調べてみると、中国語で「セクシー」は「性感」なんだそうだ。他にも、性にまつわる日本のカタカナ語を辞書で引くと、中国語での性にまつわる表現は、なんというか、本当に……そのまんますぎる表現になっていた。
日本語 | 中国語(日本漢字訳) | 繁体中文 |
セクハラ | 性騒乱 | 性騷擾 |
ジェンダー | 社会性別 | 社會性別 |
セクシズム | 性別岐視主義 | 性別歧視主義 |
ミソジニー | 嫌女症 | 厭女症 |
ヘテロノーマティヴィティ | 異性恋覇権 | 異性戀霸權 |
どうだろうか。この“そのまんまさ”は、きっと、性を軽い笑いごとにせずそのまんま話し合うために良い効果を生んでいるのではないだろうか。たとえば「ちょっとぉ、セクハラ〜wwww」とか日本語日常会話ではあり得るが、「ちょっとぉ、性騒乱〜wwww」だなんて、とても言えないと思う。
カタカナで遠ざけ、略して軽くする
日本語は、性をカタカナにして遠ざける。さらに略して軽くしてしまう。たとえば「性的いやがらせ(性騒乱)」を「セクハラ」と言い、「セクシュアルハラスメント」の略であることも忘れて「セクシーハラハラ」くらいのノリで使ってしまう。
「ちょっと、それセクハラ〜wwww」とか「○○さんってロリ系だよね」とか軽く言えてしまうのは、日本語のカタカナ略語だからだ。要は「ちょっと、それ性的いやがらせ」とか「○○さんは日本大衆文化において表象される幼さや無垢さや純粋さを備えた少女像を性愛の対象とするあり方、ナボコフの文学作品になぞらえた和製英語で言うならばロリータコンプレックスの持ち主すなわちロリコンの人が喜びそうな容姿をしているよね」みたいな実はものすっごいこと言ってる意味内容をカタカナ語にしてぼかし略してポップにキャッチーにしてしまう、日本語のカタカナ略語だからだ。
カタカナにできる。略せる。それは日本語の面白さだ。
「コスパ最高です!」
「アニソン大特集!」
「コンプラ大丈夫?」
「リスケお願いします〜」
そんな風に話せる日本語がわたしは好きだ。
けれど。
性のこと、こんなにカタカナのままでいいのだろうか?
ジェンダーとか、セクシュアリティとか、LGBT、セクシズム、DV、リプロダクティブライツ、フェミニズム、SOGI、クィアスタディーズ、などと言い続けることだけで、本当に日本語での性についての議論は進むのだろうか?
「欧米に比べて遅れてる」論に終始してしまわないだろうか?
カタカナ語にうとい人を置き去りにしてしまわないだろうか?
日本語を話す人たちが、他ならぬ日本社会の性のことを話し合い、よりよくしていくために、一体どうすればいいのかを考えていきたいと思う。手始めに、LGBTという概念が輸入された過程を見てみよう。
なぜ、性のことがこんなにカタカナ略語なのか
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