イラスト:堀越ジェシーありさ
まださっきと何も変わらない草原だった。
「あれ、なんでだろう」
「うまくいかなかったみたいですね。どこを思い浮かべましたか?」
「職場でした」
「最初はもっと楽しいところを思い浮かべたほうが、うまくいくことが多いですよ」
さっきあなたが自宅や職場って言ったんだけど、と思いながら、別の景色を想像した。考えてみれば、行きたくない場所をわざわざ想像する必要もない。よし、今度は自分の部屋にしよう。
目を閉じて景色を鮮明に呼び起こす。慣れたベッド、緑のカーテン、丁寧に本棚に入れられた大好きな漫画、入りきらなくて積み重ねられたDVD、部屋に対して大きめのテレビ。
まだ観てないDVDもあるんだった。仕事も何もかも忘れて、早くあそこで自分の好きな作品に浸りたい。机の上にあるノートパソコンで、今度は「ファクトリー」のイラストを描いてみようかな。
ここは自分の部屋。自分の部屋。