私は人を見る目がある」という幻想

高畑とのことを負い目に感じながら、百鳥ユウカさんは帰京の途についた。もやもやとした感情がもつれて、心の中に出口は見つけられなかった。心はやがて時間を旅して、いつも自分が冒していた間違いに気づく。

人はいつだって自分が正しいと思いたがる。

何か過ちを犯したり、誰かを傷つけたことがあったとしても、心のどこかで言い訳を探し、そうせざる得なかった理由を見つけようとする。 そして、こう思うのだ。 「仕方なかった。だって……」

「だって…………なに?」 そんな自己弁護ばかりしてると、心の中のリトル・ユウカが目を覚ます。 リトル・ユウカは正直者だから、曲がった事が大嫌いだ。過ちを過ちと認めて、誰かに全部話してしまって、「あなたは間違ってる」と叱ってもらいたいという願いも頭をもたげてくる。

つまりは、ユウカの心の中は堂々巡りをしていた。

新神戸から新横浜へと帰路の途上、新幹線の中でユウカは車窓から見える景色で心をまぎらわせようとぼんやり窓の外を眺めていたが、それも京都を過ぎたあたりからだんだん景色も単調なっていく。 「静岡あたりまで、何にもなかったけ……」 この関東から関西への行程は、何度か行き来をしているから、どこに何があるかもだいたい覚えてきていた。

高畑と越えた一線。 どうにでもなればいいと思って、身体を任せたあの夜。 なんだか取り返しのつかないことをしたかもしれないけど、それでも起きたことは仕方がないとも思う。開き直りと罪悪感を行ったり来たりしながら、それでも新幹線は関東へと一直線に向かっている。

このときめきが永遠に続くと信じた心はやっぱり永遠には続かなくて、いまは冷静にあの夜のことを振り返ることができる。そして、池崎にどんな顔をしてあったらいいか、ユウカは正直困っていた。

池崎とはあれから何度かラインでやりとりしてたけど、その日食べた食事とか仕事であったこととか、なんだか呑気なラインばっかり寄越してくる池崎に苛立ちのようなものを感じてユウカの対応はそっけなかった。 すると、池崎は感良く「怒ってるの?」とラインを送って来たが、こちらが返信しないでおくと、深くは探ってこなかった。

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結婚できない2.0〜百鳥ユウカの婚活日記〜

菅沙絵

友人たちが彼女につけたあだ名は「レジェンド・ユウカ」。結婚市場に残された最後の掘り出し物という意味だと説明されたが、たぶん揶揄する意味もある。妥協を知らない彼女が最後にどんな男と結婚をするのか、既婚の友人たちは全員興味深げにユウカさん...もっと読む

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marekingu #スマートニュース 2年以上前 replyretweetfavorite