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──前回、アラブのことを知るうえで、この人の見方は信用できるということで、師岡カリーマ・エルサムニーさんの名前を挙げていらっしゃいましたが、メディアはどうですか? アラブのことを知るうえで信頼がおけるメディアはありますか?
重信 どのメディアにも報道の裏には政策的意図があると感じていて、どれか一つのメディアを参考にするのはおすすめできないです。
自国のいろいろなメディアの報道を見たり、諸外国の報道も見た上で、初めて全体像が理解できるようになるのだと思います。情報の受け手側にそれが出来ていないところが、いまの中東を巡る報道の問題でもあると思っています。
メディアはツールとしても政治と同じような影響力を持っています。政治家はそのことを十分にわかっているので、当然、利用しようとする。それによって、戦争が起こったりもする。これからは、メディアをどう見るか。一つひとつのメディアの報道の仕方、用語の使い方など、「メディア・リテラシー」は生きていくうえで、普通の人にとって必要な知識だと思います。「アラブの春」はそのことがあからさまになった例としても興味深いと思います。
メディアは変わり続けるもの。特に情報のプレゼンテーションにおいては、常に新しいテクニックを生み出してくる。でも、受ける側も自身が気づいたことをシェアすることで、多くの人がメディア・リテラシーの知識を持つようになるのだと思います。
──メイさんがチェックしているメディアは?
重信 国際大手メディアのテレビで言うと、英語圏のCNN(米)とBBC(英)。英語版とアラビア語版はもちろんですが、他にカタールの「アルジャジーラ」(英語版とアラビア語版)や、サウジアラビアの「アル・アラビーア」と「MBC」、フランスの「France 24」という衛星放送局。また、それらとはまったく違う視点で報道をするイランの国営英語放送「PRESS TV」や、「ロシア・ツデーイRT」や「Al Mayadeen」などは見比べています。
そうすることで、「こっちは取り上げているのに、こっちは取り上げていない」とか、報じる際の視点の違いから裏にある政策や意図が見えてくる。
ほかにも地域政治が反映されるレバノン国内の放送局を見比べて、中東情勢の流れを見ています。本当は中国のCCTV(中央電視台)などの英語放送も見たいのですが、そこまではまだできていません(笑)。くわえてオルタナティブ・メディアをインターネットでフォローしています。例えば、「Democracy Now!」(米)、「ウィキリークス」のチャンネル、「Zeitgeist Movement Official Channel」のyou tube版など。
これだけ目を通すのは、それほどスクランブルしないとだまされてしまうと思うからです。最近便利なのはこれらすべての放送が携帯電話で見られることです。
──新聞や雑誌、ニュースサイトはどうですか?
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