イラスト:堀越ジェシーありさ
憂鬱な朝が来て、私はいつものように出勤する。
「おはよー」「おはようございます」
先に来ていたのは、私の一年あとに入って来た後輩の優妃ちゃんだ。一年前、後輩ができる、それも女の子だと聞いた時は、希望の光が胸に差し込むようだった。既に閉塞感を覚えていたこの職場の空気を、年下の女の子が吹き飛ばしてくれるのでは、と淡い期待を抱いていたのだ。
しかし、やって来たのは基本無口で、愛想がいいとはお世辞にも言えない、有り体に言って地味な女の子だった。話す機会も少ないので、正直いつも何を考えてるのかわからない感じだが、それでもこちらが教えた仕事はちゃんとこなしてくれる。人事の担当者も、彼女のそういうところを見て採用したのかもしれない。
「おはよう」
振り向くと、上司の崎田だった。
「あ、おはようございます」
年齢は四十代前半の細身の中年だ。口を開けば嫌みばかり言う男で、相手を喜ばせようとするホスピタリティが皆無だった。以前「崎田さんは、この銀行長いんですか?」と全く興味もないままに質問してみたら、「君が今日取った昼休みよりは長くないかな」と言われた。想像を絶する角度からの嫌みである。