■技術11 訴求力は「棒読み」ではなく「熱意」から生まれる
資料の持ち込みをご遠慮いただいている理由
「プライムニュース」ではゲストに対してお願いしていることがあります。メモの持ち込みは極力ご遠慮ください、ということです。
資料の持ち込みは企業のトップの方々が多い。企業としてはテレビに出ることは宣伝になると考えていらっしゃるので、アピールしたいことがたくさんあります。また、あまりテレビ出演に慣れていない方もいらっしゃる。そうすると、周囲の方々が膨大な資料を用意されるのです。こちらが予定している質問に対して、逐一答えを書いた紙が何十枚もある。第一問目はこれですから、こう答える、二問目はこれ、といった具合です。
僕たちが聞きたいのは、苦労話であったり、失敗談であったり、今後の展開やチャレンジであったりするのですが、そうした話は前後します。十問の質問があるとして、それをこちらが順番に聞いて、ゲストが資料を読んで答えていたら、番組が成り立たなくなってしまいます。資料を持ち込まないでくれと言っても、先方は嫌がります。失言の可能性が出てくるからです。そういう方にはメモという形でお願いします。
ただこれも何度もご出演していただくうちに変わってきます。
ゲストの答えが「話」ではなく「読み」になってしまう
経済同友会代表幹事の小林喜光さんは初めて出演くださったときには、かなり準備をされて、質問についてもこの順番にしてくれ、というようなことを周囲の方々がおっしゃいましたが、最近では何の資料もお持ちになりません。「今日は何やるの?」と余裕をもって番組に臨まれます。そうすると、発言も柔軟になっていいお話を伺うことができます。
一度いらしてくれたゲストを何度もお招きしてリピーターになっていただくことにはこうした効果があるのです。
もちろん何回もご出演していただいても、資料を持ち込まれる方もいらっしゃいます。人それぞれにやり方がありますから、仕方のないことです。資料を持ち込まれて困るのは、ゲストの答えが「話」ではなく、「読み」になってしまうことです。僕が質問したことに対してゲストが答えるという「向き合い」を見せるのが番組の意図です。その向き合いにおける真剣さ、こちらのぶしつけな質問への怒りや、どうしても譲れないこだわりなどを視聴者に見せるのがこの番組なのです。資料を読んでいたのでは、そうしたものが伝わらない。ゲストにとっても非常にもったいないことだと思います。
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