広告型・個人課金型ビジネスの決算の読みかた

『MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣』の著者であるシバタナオキさんに、決算資料から会社の本当の価値を読み取る方法を教えていただくこの連載。最終回は、食べログやフェイスブックを例にして、ネット広告型のビジネスについて説明します。

前回まで、フィンテック型、SaaS型のビジネスについて解説してきました。ネットビジネスのなかでも大きな地位を占めているのが、広告型のビジネスです。広告型メディア企業の代表例であるFacebookを見ているとさまざまな広告が表示され、ついクリックしてしまうことがあると思います。そうやってクリックされた数や、クリックしてから買い物された成果の一部が、Facebookの収入源となります。これがネット広告型のビジネスです。

広告ビジネスを読み解くうえで重要な指標

広告型では、どんなメディアが成功しやすいのか—。広告主の気分になって考えると想像しやすいと思います。どんなメディアであれ、広告を見てくれる人、つまりユーザー数が多いメディアに広告を出したいと思いますよね。なおかつ、自分たちの商品に興味を持つ人が多く集まっているメディアに出稿するのが理想です。100万人に広告が届いたとしても、その商品を買ってくれる人が少なかったら、広告を打つメリットは薄れてしまいます。

これを広告ビジネスの立場で考えると、いかに多くのユーザーを集め、「1ユーザーあたりの売上」を最大化するか、という点がすべてになります。この1ユーザーあたりの売上を、「ARPU」(アープ)といいます。

つまり、広告ビジネスにおいては、ユーザー数とARPUが高ければ高いほど、収益が高くなります。

売上=ユーザー数×ユーザーあたりの売上(ARPU)

ところが、一般的にユーザー数とARPUはトレードオフの関係にあります。たとえば、ARPUを上げるために、特定の分野に特化したメディアを作るとします。クックパッドをイメージするとわかりやすいかもしれません。 クックパッドを見にくる人の目的ははっきりしています。美味しい料理を作りたいからクックパッドを訪問するわけです。そうであれば、「調味料の広告を打ちたい」と考える広告主がいたらクックパッドに出稿したくなるでしょう。

ところが、「美味しい料理を作りたい人」というターゲットを絞れば絞るほど、見にくる人の数は少なくなります。最初の要件であるユーザー数は小さくなってしまうのです。

日本の医師を網羅しても売上を伸ばすエムスリー

このユーザー数とARPUをどんな方法で増やしているのかを知るのが、広告型の決算を読むときのコツになります。「エムスリー」の決算スライドを例に見ていきましょう。

エムスリーは医師に特化したメディアを運営しています。会員になると、医療に関する最新ニュースや海外論文を読めるほか、医師同士で意見交換することができます。また、開業準備や転職の支援サービスもあります。

決算スライドを見ると、日本の会員数は20万人から25万人程度で横ばいとなっているようです。


エムスリー株式会社2018年3月期 第3四半期決算発表資料より抜粋。

日本全体の医師数が約30万人ですから、エムスリーは日本の医師ほぼ全員を網羅しています。国内については頭打ちとなっていますが、世界への展開で会員数を増やしています。

また、次のスライドを見ると広告主である製薬企業からの単価を引き上げ、同時に利用企業数を増やすことで売上の拡大を狙っていることが読み取れます。

つまり、「売上=ユーザー数×ユーザーあたりの売上(ARPU)」の方程式に当てはめていえば、世界展開によってユーザー数を25万人から400万人に増やし、製薬会社への働きかけによってARPUを増やそうとしていることなります。

広告と個人課金を組み合わせた食べログ

同じくターゲットを絞ったメディアである食べログの決算スライドも見てみましょう。


株式会社カカクコム2018年3月期第3四半期決算説明資料より抜粋

まずは、ARPUを割り出します。「売上=ユーザー数×ユーザーあたりの売上(ARPU)」ですので、この式を入れ替えると次のようになります。

ユーザーあたりの売上(ARPU)=売上÷ユーザー数

スライドを見ると食べログの月間利用者数は1.3億人。四半期の広告売上高が6億円です。月ごとに直すと2億円ですから、

2億円÷1.3億人=1.53円

つまり、1ユーザーあたりの1ヵ月の広告売上は1.53円となります。この数字だけを見れば、「意外と儲からないな」という印象です。

しかし利用したことがあればご存知かと思いますが、食べログには広告だけでなく個人課金ビジネスもあります。

個人課金ビジネスの方程式も、これまで見てきた広告ビジネスの方程式と同じ「売上=ユーザー数×ユーザーあたりの売上(ARPU)」です。広告ビジネスと個人課金ビジネスのちがいを強いて挙げるならば、広告ビジネスの売上は間接的に「広告主(企業)」からもたらされ、個人課金ビジネスの売上は直接「ユーザー」からもたらされることです。

では、食べログの個人課金型のARPUを計算してみましょう。

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決算資料からビジネスの仕組みが見えてくる

シバタナオキ

企業が四半期ごとに公表している決算資料。決算資料が読めれば、その会社の本当の価値や強みがわかり、仕事や投資に役立てることができます。ビジネスパーソンの間で話題沸騰となっている『MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣』の著者である...もっと読む

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