インターネットビジネスはZOZOTOWNのようなECビジネスだけではありません。Facebookのような広告型モデルもありますし、Netflixのようなユーザーから課金する個人課金ビジネスもあります。どんなビジネスモデルでも基本、決算スライドの見方は同じですので、この連載の第2回〜第5回で解説してきたスタートトゥデイのスライドの読み方が通用します。
ただ、ビジネスモデルによっては、おさえておきたい方程式や注目すべき指標、つまりKPI(Key Performance Indicatorの略。主要業績評価指標のこと)が異なります。ここからは「フィンテック」「SaaS」「広告型・個人課金型」の3つのビジネスモデルについて、実際の決算スライドを見ながらKPIを解説していきます。
フィンテックは2つのモデルの見極めから始める
まずフィンテックからいきましょう。フィンテックは、金融を意味するファイナンス(Finance)と、技術を意味するテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語です。銀行、クレジットカード、送金サービス、決済・決済代行、仮想通貨、クラウドファンディングなどがフィンテックにあたり、そのビジネスモデルは多種多様です。
そこで、フィンテックビジネスのKPIは、収益方法のちがいによって2つに分けて考えることにします。「フロー型」と「ストック型」です。
フロー型は、取扱高という「フロー」によって売上が決まるモデルです。たとえば、クレジットカードをイメージしてください。ユーザーがお店でクレジットカードを使うと、決済金額の数%がカード発行会社に支払われ、それがカード発行会社の売上となります。
フロー型で大切な数字は2つ、ひとつは取扱高です。たくさんの人がクレジットカードで支払ってくれるほど、売上は大きくなります。もうひとつは手数料率です。手数料率が高ければ売上は大きくなります。
フロー型の売上収益=取扱高×手数料率
フロー型のフィンテックビジネスでは、取扱高と手数料率がKPIだということです。
ストック型のフィンテックビジネス
一方、フィンテックビジネスのもうひとつのモデルのストック型は「ストック」、つまり蓄えによって売上が決まるモデルです。たとえば、銀行は預金者からお金を預かり、そのお金を企業などに貸し出して金利を得ています。この場合、預金残高というストックが多ければ多いほど企業に貸せるお金が増えて銀行は儲かるわけです。
先ほど、フロー型の例としてカード会社をあげましたが、カード会社には、もうひとつ収益源があります。リボ払い※やキャッシングによる金利手数料です。これはストック型のビジネスです。
※ リボ払いは、利用金額や件数にかかわらず、毎月の支払額が一定になる決済方法。たとえば、月々の返済を1万円に設定したリボ払いの場合、その月に5万円分の買い物をしても、翌月に支払うのは1万円になる。その代わり、金利手数料がかかる。
リボ払いやキャッシングは、言い換えれば短期でお金を貸すビジネスです。リボ払いの金利は実質年率15%に設定されているケースもあります。この場合、10億円のリボ払い残高があれば年1億5000万円の金利がカード会社の売上となります。 リボ払い残高が多いほど、クレジットカード会社が受け取る金利も増えます。ですから、ストック型では残高がKPIとなります。
ストック型の売上収益=貸付残高×金利
フロー型とストック型のビジネスモデルのちがいは一瞬、戸惑うかもしれませんが、身近な税金にあてはめて考えてみるとわかりやすいと思います。 月々給料に応じて支払う所得税や、買い物するごとに支払う消費税はフロー型です。わたしたちがたくさん稼いだり、多くの買い物をすれば、国は儲かるわけです。一方、持っている資産額に応じて支払う固定資産税はストック型です。わたしたちが持っている資産が大きければ大きいほど、国は儲かります。
楽天カードの決算スライドを見てみると……
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