高畑の手がユウカのスカートの中へと伸びる……もう後戻りはできない。
ゆっくりと唇を重ねて、舌を絡ませ合うユウカと高畑。
あれほど、反発していたはずなのに、いざ受け入れると決めた瞬間から躊躇はしなかった。
高畑はユウカのその反応に一瞬驚いたようにみえたけれど、両手をユウカの背中に回してグッと抱きしめる力を強くした。
「あっ」
「ごめん。痛かった?」
「大丈夫」
そう言いながら唇を再び重ね合わせると、高畑は丁寧にユウカのシャツのボタンを一つずつ外していった。
「ユウカさん、僕の残りの人生をあげるよ」
「……うん」
ユウカが高畑のシャツのボタンを外してあげていたときに、高畑は自分の手をユウカの背中にまわして、ブラのホックを片手で器用に外した。
露わになるユウカのふたつの乳房。たぶん高畑に見せるのは初めてだ。
「ユウカさんの身体は本当に綺麗だよ」
「そんなお世辞言わなくてもいいよ。ただ、私を愛してくれたらそれでいい」
「僕はユウカさんのことを愛すよ。残りの人生をかけて」
「そういうのも要らない。ただ私を抱きしめてくれたら、それでいい」
高畑は覚悟を決めたようだった。
そこからは黙って服を脱ぐとユウカの上に覆いかぶさった。
ユウカは自分が高畑に抱きすくめられてる中で、自分の中の何かが満たされるのを感じた。
少し開いた膝の間から高畑が侵入してきた時、もっと自分を満たして欲しいと貪欲になった。その夜は自分から何度も激しく高畑を求めた。高畑は無言のまま彼女の要望に応えた。
お互い精根尽きて眠りについた頃、窓の外は白白と明けていた。
朝になった時、ユウカは水を一杯飲もうと起き上がろうとしたら、それに気づいた高畑が裸のまま、自分の鞄まで歩いていき、未開のペットボトルの水を持って来てくれた。
「ありがとう」
久しぶりに口にした言葉は、喉につっかえてうまく言えなかった。
「大丈夫」
何が大丈夫かわからないけど、それを聞くとユウカは自然と心が落ち着いた。
裸のまま、お互いシーツにくるまりながら、肌を重ねると相手の体温が直に感じられる。
人の肌の体温は、人間が他人に与えられる最大限の心地よさだと思う。
ふと、自分が犯した過ちと今の心地よさを天秤にかけると、心地よさの方を優先した自分をユウカは少しも悔いてはいなかった。
それが自分でも不思議だった。でも、それは今だけなのかもしれない。
一瞬。それが永遠に続くように思える一瞬。
心のどこかで、それが永遠に続くわけはないとわかっているのに、絶対だと一瞬でも思いたい心、それが人を愛する心なのだと思う。
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