前回まで、決算スライドの「業績サマリー」「販管費の内訳」から、スタートトゥデイの特徴や成長率を見てきました。今回は、決算スライドを読むうえで知っておくと便利な「バランスシート」「キャッシュフロー」「自己資本利益率」の見方を簡単に説明していきます。
IT企業のバランスシートは大きな変化がなければ読み飛ばしていい
まず、バランスシートをチェックします。バランスシートというのは、貸借対照表とも呼ばれ、企業の決算期など、ある時点での資産状況を表すシートです。全財産がどれくらいあるのか、返さないといけないお金はいくらかなど、その企業の財政状況がひとめでわかります。
バランスシートでは、前期と今期の数字を比べてみて、よほど大きな変化があれば、何があったのか、原因を調べてみます。ただ、IT関連であれば、バランスシートの数字が大きく変わることは少ないため、飛ばしてしまうことも多いです。
今回、例に出している2017年度の資料では大きな変化はないのですが、変化があったときのために、以前の資料を見ながら考えてみましょう。
こちらは2016年3月期Q3の決算スライドです。このバランスシートを見ると、「流動資産」※の数字に大きな変化があります。
※ 短期間で現金化、費用化ができるもの。現金、預金、有価証券、商品など。
前期は248億円だったのが、393億円へと急増しています。流動資産の下に掲載された現預金や商品は横ばいなので、それ以外の流動資産が増加したことになります。こうした変化があれば、原因を探る必要があります。
このときに何が起きたかというと、「ツケ払い」の開始です。前回でも触れましたが、「ZOZOTOWNで買い物をして商品を受け取っても支払いは2ヵ月後でOK」という制度です。このツケ払いが始まったのは2016年11月。ツケ払いの数字が反映されて初の決算となるQ3のバランスシートでは売掛金※がガンと増えため、流動資産の数字が50%以上も増えることになりました。
※ あとでお金を受け取れる権利。 キャッシュフローでお金の流れをチェック
バランスシートに大きな変化がある場合の具体例がわかったところで、2017年度の資料に戻って、次は「キャッシュフロー」をチェックします。キャッシュフローとはお金の流れのことで、キャッシュフロー計算書を見れば、会社のお金の流れとどのくらいの現金があるかがわかります。
ここでは項目ごとの増減をざっと見て、大きな変化がないかを確認します。
まずは本業でのお金の出入りを示す「営業活動によるキャッシュフロー」ですが、前四半期よりも減っていますが、法人税の支払いが要因として書かれているので信じることにします。
気になるのは「投資活動によるキャッシュフロー」です。前四半期は3億円弱のマイナスだったのが、19億円のマイナスへと大幅に増えています(事業への投資は、会社としてはお金が減る行為なので、投資すればするほどマイナスになります)。
このスライドは親切で、増減要因が書かれているのですが、一番上には「物流施設を新設して敷金を払いました」とあります。売上も伸びているわけで、これは理解できますね。 その下には「PBプロダクトに係る設備投資」「海外子会社設立の為の出資」とあります。これはなにかというと、前回、販管費の内訳を見たときに明らかにしましたが、将来のZOZOSUITへ向けての投資ですね。
3億円弱のマイナスから19億円のマイナスという、一瞬驚いてしまうような大きな変化であっても、このように理由がわかっていれば、必要な投資だということが判断できます。
現金はどれくらいある?
次に、会社がどのくらいの現金(キャッシュ)を持っているのかを確認します。いくら売上が高くても、会社にキャッシュがないと倒産することもありえますので、必ずチェックしましょう。
スタートトゥデイの場合、「現金及び現金同等物の期末残高」の項目を見ると、212億円の現金があると書かれています。
一見、大きな金額ですが、僕からすると「212億円しかない」という感覚です。何を基準に「しか」と考えたかというと、業績サマリー(4P)に記載されていた販管費です。
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