元俳優の弁護士・福井健策さんとの
出会いで、すべてが変わった
今回は、僕が著作権の保護期間延長の反対運動にコミットした最大の要因である、弁護士の福井健策さんとの出会いについて語ります。
福井さんに僕が最初に出会ったのは、文化庁が主催する、次世代著作権システムについて考えるためのクローズドな研究会でした。そこで福井さんと著作権について議論してみたら、彼も著作権の保護期間の延長に対して反対意見を持っていた。僕は正直なところ、そのときは著作権保護期間延長問題に興味はあまりなかったんです。だって、現行法の「著作者の死後50年」という規定も「長すぎる」と思っていたので、それが70年になろうが知ったこっちゃないよ、的な。とはいえ、輸入権以降、音楽業界を中心とした権利者団体たちが、どんどん自分たちの都合だけを考えて文化の公益性とか考えず、インターネットを規制するような法改正ばっかしてくるようになりつつあった。このまますんなり彼らの思惑通り延長法案を通すのはシャクだな、と思ったんですね。
福井健策さんは、いまでこそIT分野にくわしい弁護士として有名ですが、もともと文化人や芸術界の人々の弁護士として著名な方。著作権や芸術・文化法に精通しています。そもそもの経歴が、非常にユニークで、東京大学入学後、ずっと演劇をやっていて、ご自身も役者をやったり、舞台のプロデュースもやっていらっしゃいました。
当初、福井さんは弁護士になる気なんてはさらさらなくて、「演劇の世界で身を立てていきたい!」と考えていたそうですが、やはり役者だけで食べていくのは難しい。そこで、「演劇をやりながらも食べていける職業はないか」と考えて、司法試験を受けたら見事合格。弁護士の資格を取ってしまったという、とても優秀な方なんですね。しかし、弁護士の仕事と演劇の両立はやはり難しい……。そこで、結局、弁護士の道を選んだそうです。そんな経歴の方なので、当然、文化や著作権にはとても感度が高かったわけです。
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