生きがい」としての片思い—孤独と性犯罪

教室の中で一日中誰とも話さない生活を送り続けた結果、対人コミュニケーションのスキルが著しく低下してしまった坂爪さん。そんななか、自分と似たオーラを纏う女子を発見し、「この人なら自分をわかってくれるはず!」と思い込んでしまいます。一度もまともに話したことのない相手に、大胆不敵にも「彼女にする」と想いをたぎらせるのですが……。『孤独とセックス』、ますます厄介です!

4 孤独と性犯罪

【18歳の問い④】 
 第一志望の大学に入ったのですが、クラスやサークルの中でなかなかうまく人間関係を作ることができません。ストレスでモヤモヤしている時、通学中の満員電車で、隣の女性の胸やお尻に触りたくなることがあります。変な気持ちが起こらないように、最近は必ず両手で吊り革をつかむようにしています。それでも、いつか一線を越えてしまいそうで、自分が怖いです。

●自分が支配できそうな相手を選ぶ

痴漢をはじめとする男性の性犯罪に対しては、「性的な欲求を抑えきれないことが原因で起こる」という考えが未だに残っています。しかし、性犯罪の原因を本人の性的欲求の強さに結びつけるのは、短絡的な見方でしかありません。

相談内容からも伝わってくるように、あなたの悩みの根本的な原因は、「性的な欲求を抑えきれない」ということではありませんよね。そう、男性の性犯罪の背景には、孤独とそれに伴う女性観の歪みが潜んでいます。以下、私自身の体験を基にして説明しましょう。

孤独だった高校時代、同じクラスの中で初めて気になる女子に出会いました。彼女の名前は、鈴木陽子さん(仮名)。当時心酔していた漫画家・江川達也氏の学校教育を風刺した作品『GOLDEN BOY 〜さすらいのお勉強野郎〜』に出てくるヒロイン・陽子さんと同じ名前だったことから興味を持ったのですが、実際に教室の中で彼女とまともに話したことは一度もありませんでした。

鈴木さんも当時の自分と同じく、休み時間中は誰とも話さずに机に突っ伏して寝ているか、一人で小説を読んでいることが多かったので、「もしかしたら、自分と同じタイプの人間なのかもしれない」と、徐々に彼女に惹ひかれていくようになります。

その後、一方的かつ急激に鈴木さんへの思いを募らせてしまった私は、一度もまともに話したことのない相手であるにもかかわらず、大胆不敵にも「鈴木さんを彼女にする」という野心を抱くようになります。

孤独の中で、自分勝手な理由で誰かを好きになり、同じく自分勝手な理由で「もうこの人しかいない」「この人なら、自分のことを分かってくれるはず」と思い詰めてしまう。この徹底的な「他者性の欠如」こそが孤独な男子の恋愛の特徴であり、恋愛やセックスの未経験者が未経験者であり続ける根本的な原因なのかもしれません。

当時の私が鈴木さんに目を付けたのは、女子とうまく付き合うだけの経験も自信も全く無い中で、鈴木さんのようなおとなしくて目立たない女の子であれば、自分でも付き合えるかもしれない、そしてあわよくば身体の関係にまで持ち込めるかもしれないと考えたからです。

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孤独と性をめぐる11のレッスン

坂爪真吾

高校の三年間、友だちは一人もできなかったし、恋人も作れなかった。恋愛もセックスも何一つできなかった。一発逆転を賭けて東大を目指すも、センター試験は全教科白紙で提出。すべてから逃げ出した坂爪少年は「卒業式が終わったら、自殺しよう」と決意...もっと読む

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コメント

marekingu #スマートニュース 4日前 replyretweetfavorite

c___v とっても興味深い 7日前 replyretweetfavorite

megamurara 吹いた。面白すぎて。 7日前 replyretweetfavorite

3axan 「孤独をこじらせる中で、片思いの異性に自分勝手な願望を投影し、それを追いかけることが、私… https://t.co/Rjk8c6y1kd 8日前 replyretweetfavorite