イラスト:堀越ジェシーありさ
夢工場を訪れてから、マサキの夢はさらに自由になっていた。夢工場の様子を見て、夢の仕組みを頭の中で描けるようになったことが、マサキに不思議な力を与えているようだった。
相変わらず他人の夢ばかりを見ていたが、自分の意思を強く意識することはやめにした。管理人に危険だと教わったからだ。
そして空気漏れのない自分の夢を見た時、マサキはまたあの扉を探した。たまたま学校から始まった夢だったので、音楽室の方まで行ってみることにした。すると、ミキコさんの夢の時と同じ場所に、真っ青な扉はあった。
扉の前に立ったマサキは、管理人の言葉を思い出していた。
〈扉には自動で鍵がかかって、二度と開かなくなる〉
管理人は、夢の修正をすると、もう二度と夢工場に入ることができないと言っていた。その言葉を思い返しながら、マサキは青い扉に手を伸ばした。取っ手を回したが、押しても引いても開かない。やはり鍵がかかっているようだ。
あの時言われた通りで、ここに来るのが二度目のマサキには、もう扉は開かない仕組みになっているのだろう。鍵穴を覗いてみても、中は暗闇が広がっているだけだった。
マサキは大きく息を吸って、そして、その倍の時間をかけるように息を吐いた。それから頬を緩め、微笑んだ。うまくできた仕組みだな、と思った。
おもむろにポケットに手を突っ込んで、そこから何かを取り出した。
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