二度と訪れることのできないはずの夢工場の扉の鍵が……

【他人の夢⑩】
あの日以来、より夢を自由にすることができるようになった自分は、夢工場を再び訪れていた。〝二度と開くことのない〟と言われた扉――、開こうとしたがやはり結果は変わらない。しかし、ポケットに手を入れるとそこには……
<WEAVERの河邊徹がドラムスティックからペンに持ち替えて描いた作家デビュー作!>


イラスト:堀越ジェシーありさ



 夢工場を訪れてから、マサキの夢はさらに自由になっていた。夢工場の様子を見て、夢の仕組みを頭の中で描けるようになったことが、マサキに不思議な力を与えているようだった。

 相変わらず他人の夢ばかりを見ていたが、自分の意思を強く意識することはやめにした。管理人に危険だと教わったからだ。

 そして空気漏れのない自分の夢を見た時、マサキはまたあの扉を探した。たまたま学校から始まった夢だったので、音楽室の方まで行ってみることにした。すると、ミキコさんの夢の時と同じ場所に、真っ青な扉はあった。

 扉の前に立ったマサキは、管理人の言葉を思い出していた。

〈扉には自動で鍵がかかって、二度と開かなくなる〉

 管理人は、夢の修正をすると、もう二度と夢工場に入ることができないと言っていた。その言葉を思い返しながら、マサキは青い扉に手を伸ばした。取っ手を回したが、押しても引いても開かない。やはり鍵がかかっているようだ。

 あの時言われた通りで、ここに来るのが二度目のマサキには、もう扉は開かない仕組みになっているのだろう。鍵穴を覗いてみても、中は暗闇が広がっているだけだった。

 マサキは大きく息を吸って、そして、その倍の時間をかけるように息を吐いた。それから頬を緩め、微笑んだ。うまくできた仕組みだな、と思った。

 おもむろにポケットに手を突っ込んで、そこから何かを取り出した。

 マサキの手には、小さな鍵が握られていた。

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夢工場ラムレス

河邉徹

WEAVERのドラマー・河邊徹の作家デビュー作。バンドで作詞を担当してきた河邊の 〝言葉の世界〟をドラムスティックからペンに持ち替え、描いた「夢」をテーマにした長編作。 ...もっと読む

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